■出雲三十三観音霊場巡礼
3月18日から3月21日まで出雲大社と出雲三十三の観音霊場を巡礼してきました。
出雲は神話の国です。出雲の歴史の中で三十三の観音霊場が設定されたのは、室町期の成立ではないかといわれています。その頃は、1番長谷寺より33番岩屋寺までおよそ56里、歩いて1週間から10日ほどの旅で霊場の近くの農家は宿を提供し、巡礼を接待し巡拝を容易にしたといわれています。
参拝方法は、
(1)霊場へ入ったら、まず水屋で口をすすぎ、手を洗います。
(2)鐘楼で鐘を撞きます。
(3)本堂向拝で所定の箱に納札を納めます。
(4)お灯明(ろうそく)、線香、そして賽銭(10円)をあげます。
(5)懺悔文、開経偈、摩訶般若波羅密多心経、延命十句観音経を唱えます。
(6)納経所で200円の納経料を支払い、朱印した納経を貰います。
これを、33回ひたすら繰り返します。今回は、(4)から(6)を実践しました。
明治の中ごろの巡礼の記録によれば、当時宿料は、10銭から15銭、巡拝に要した総費用は2円26銭2里であったといいます。
私の場合は、3泊でホテル代2万5千円、賽銭と納経料で約7千円、高速代とガソリン代で3万5千円、昼食夕食代で1万5千円、総費用で8万2千円でした。
三十三観音霊場の中で特に印象に残っているのが、第二十九番の朝日寺(あさひじ)と第二十一番の清水寺(きよみずでら)です。
前者は、約500メートルあまりの急勾配の参道を登ります。幸い天気に恵まれましたが、雨なら間違いなくリタイアです。三十三寺きっての一番きつい環境です。しかし、登るにしたがって展望がひらけ、眼下に美しい宍道湖(しんじこ)の景観を拝むことができます。最高の気分です。苦労して登り切った満足感で一杯です。
後者は、深山秘境の霊場です。精進料理の宿坊(旅館)が三館並んでいます。樹木におおわれた霊気に見も心も洗われるごとく浄化されていきます。美しいお寺です。
出雲、米子、松江と町にも顔があるように、寺にも顔があります。そんな寺との出逢いを求めて車を走らせます。寺付近に車を止め、参道を歩き、そこに存在する自然を感じながら“あいさつ”をします。「来られました」とろうそくと線香を捧げ、読経します。息を長くすることで腹筋が鍛えられ、8時から17時という規則正しい時間の中で、食事の大切さとありがたさを知ります。人は何のために生きているのか、それを教えてくれるのが巡礼です。人は息をしていることが当たり前ではなく、すごいことなんだと、観音様と出逢うことでわかります。息をすることで生きる、生きるために息をする、呼吸の存在が大きく見えてきます。新鮮な呼吸をするために、これからも巡礼を続けていきたいと思います。
最後に先達の平幡良雄氏の言葉をご紹介します。
”じゅんれいのみち” には、いまなお美しい自然が生きており、道ゆく中で心うつ人情にふれ、慈悲あふれる観音様やお大師様と出会うなどしているうちに、せまい日常から離れ、悩みや苦しみもなくなり、これからの人生に広い世界がひらけてくる。とまどうことはない、理屈抜きで巡礼の道を歩きましょう。