アドラー心理学の教え
私は、ドラッカー塾たるものに1年間通いました。その結果、中小企業に活用できる限界を感じました。そこで模索をしていたときに、出会ったのが、アドラーでした。
アドラー心理学は、個の違いを認めています。そして、個が個らしく個以外と接する中で「貢献」することをとても重要視しています。自分の強みを認知して、強みを活かして貢献できる場を自らが勇気をもって探し続ける。そこに人生の意味を見いだす。そのための課題が仕事と人間関係と愛であると唱えます。私は、「生きるということ」「愛するということ」のエーリッヒ・フロム(ドイツの社会心理学者。1900年~1980年)に傾倒した時期がありました。卒業論文で“働くことの意味”を書き上げる中でもかなり引用しました。それから労務管理に携わって30年弱が過ぎ、中業企業経営のために何か貢献できることはないかと、労働基準法、労働契約法、労働判例と向き合ってきましたが、心の点では、積極的傾聴話法、交流分析止まりで、ドラッカー哲学では自分の目的が達成できないと壁に当たっていました。その時の光明がアドラーの「幸福な人生を営むには仕事・人間関係・愛という人生三つの課題に、共同体感覚を基礎にして取り組むこと」の教えでした。これを中小企業経営の中枢に注入すれば、従業員一人ひとりが新たな目標へ一歩踏む出す勇気を持つことができると確信したのです。そのことを今回紙面上でお伝えしていきます。
まずは、アルフレッド・アドラーをご紹介したいと思います。
オーストリア生まれの心理学者で、内科医を経て精神科医となりました。ウィーンに世界で初めての児童相談所を設立しました。身長154㎝で、1870年生まれ、1937年に亡くなりました。67年の人生です。彼は、劣等コンプレックスの概念の創始者とも言われています。“人間は誰でも「無力な状態から脱して優れた存在になりたい」という欲求を持っている。その優越したいという欲求があって、そのために劣等感が生じる。”というものです。また、彼は人間性心理学の源泉といわれ、欲求五段階説のアブラハム・マズローや、カウンセリングの父カール・ロジャーズ、交流分析(TA)の父エリック・バーンそして、自己啓発の父ともいえるデール・カーネギーに強い影響を与えたとされています。
また、「無意識の発見者」「夢判断」「精神分析」で有名なジグムント・フロイト(1856年~1939年)の弟子のような勘違いをされるケースがありますが、“共同研究者”が正しい位置づけであり、過去志向の「原因論」のフロイトと未来志向の「目的論」のアドラーでは考え方が異なります。
アドラーは「病んだ心」を対象とする臨床心理学の分野で活躍した人物ですが、「困難を克服する活力を与える=勇気づけ」を唱えました。“人間は自分の運命の主人公である”は、彼の心理学が「確実に勇気づける」、「未来志向である」といわれる所以を表現した言葉だと思います。
では、彼の理論を見ていきましょう。5つあります。
自己決定性
自分を主人公にする。人間は環境が過去の出来事の犠牲者ではなく、自ら運命を創造する力がある。「あなたをつくったのはあなた。あなたを変えうるのもあなた」
目的論
人間の行動には目的がある。過去の原因ではなく、未来の目標を見据えている人間の行動には、その人特有の意思を伴う目的がある。「未来の目標が現在を規定する未来志向」
全体論
人は心も体もたったひとつ。人は心の中が矛盾対立する生き物ではなく、一人ひとりかけがえのない分割不能な存在である。「パーソナリティには統一性がある」
認知論
誰もが自分だけのメガネを通してものを見ている。人間は、自分流の主観的は意味づけを通して物事を把握する。「その人が出来事を主観的にどう意味づけているかを重視する」
対人関係論
すべての行動には相手役がいる。人間のあらゆる行動は、相手役が存在する対人関係である。「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」
次に人生で直面しなければならないさまざまな課題(タスク)として次の3つをあげています。
1.仕事の課題→役割、義務、責任が問われる生産活動への取り組み
2.人間関係の課題→身近な他者との付き合い
3.愛の課題→カップルを基本として親子を含めた家族の関係
そして、アルフレッド・アドラー心理学の重要な価値観として、「共同体感覚」があります。これは、家族、地域、職場などの共同体の中での所属感・共感・信頼感・貢献感の確かさを求めて行動することです。アドラーは言います。“共同体感覚が備わった行動する人が精神的に健康な人である”と。参考までに共同体感覚の低い行動する人を”支配的な人”、共同体感覚が低く行動しない人を“依存者” ”回避者”、知識的な共同体感覚は高いが行動しない人を”評論家”と分類しています。
私なりに解釈すれば、
1.「思い込み」から自分をラクにして
2.対人関係をうまくできるようにして
3.感情のコントロールができれば
『自分らしく生きる』第一歩が踏み出せる。となります。