年次有給休暇について
みなさん、ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか?
短い休みの方・長期連休の方いろいろあると思いますが、少しでも心身ともにリフレッシュできたのであればいいですね。
さて、今回は、年次有給休暇についてです。有給休暇とは入社して6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上の出勤をしていれば10日の休みが取れるという制度です。その後1年ごとに有給が付与されていきます。これは労働基準法39条に決められている当然の権利であるのですが、日本人の有給休暇の取得率は決して高いわけではありません。ある調査によると、世界26か国で有給休暇の取得率についての調査を実施したところ、日本が2年連続ワースト2位という結果が出たそうです。
有給休暇を取らない理由としては
・有給休暇を取ると他の人に迷惑をかけてしまう。
・会社の雰囲気が取れるような雰囲気ではないため取りにくい。
・病気で入院などしたときのために使いたくない。
・仕事が忙しすぎて取れる状況ではない。
などの理由があり、半数以上の人が自分の有給が何日あるのか知らないと答えています。ちなみに、他国の有給取得率は、フランス・スペイン・ブラジル・香港では付与された有給を100%取得しており、当然の権利として認識しているようです。
また、「有給を取得するのに罪悪感を感じるか?」との質問に対して日本は18%の人が「はい」と答えており、これは他の国との比較では、第一位となってしまいました。
日本人は責任感が強く、勤勉の人が多いといわれます。これは、日本人のいいところではあるのですが、最近の長時間労働による過労死などの問題を考えると、この勤勉さが裏目に出てしまっているのではないかと思います。
少人数でやっている会社では、有給なんて認められないとなるかもしれませんが、実は有給休暇取得権というのは、付与日がくれば当然に発生しているのです。ですから、従業員からの「〇日に有給を取ります」という請求は、有給の取得請求ではなく、元々ある権利の日時の確定をして、権利を行使することにすぎないのです。会社が有給は認めませんといえば、権利の侵害となってしまうので注意が必要です。
また、使用者側には「時季変更権」という権利がありますが、有給休暇は、自由に利用できることが原則であるため、時季変更権が適正であると認められるには、それなりの合理的な理由が必要となってきます。「その有給取得により事業の正常な運営が妨げられる」と認められる場合に行使できるとされています。
この点の判断については、事業の内容、規模、労働者の担当業務の内容、予定された年休の日数、他の労働者の休暇との調整など諸々の事情をみて総合判断されますが、現実的には、有給休暇の時季変更権が認められるには、ハードルが高いと言えます。
例えば、同日に多数の人が有給を取ってしまうなど、明らかに「事業の正常な運営ができなくなる」ことがわかる場合にはいいのですが、日常的に業務が忙しいからとか、慢性的に人手が足りないことだけでは、この要件は充たされないと考えられます。なぜならば、人手不足の会社ではいつまでも有給がとれなくなるからです。ただ忙しい、人手不足だからというのは、権利の乱用ととられてしまうこともあるので注意が必要です。
昨年、労働基準法改正案が通常国会に提出され、当初は平成28年4月より施行予定であった「有給休暇の義務化」においては、今現在、衆議院で審議されており、春からの施行は先送りになっています。いまだ法律案の段階であり、現段階では決定はしていません。
そのことを踏まえた上で、この改正案の内容を説明しますと、有給休暇の付与が10日以上の労働者を対象にして、付与した有給休暇日数のうち、年5日分については企業が1年以内に時期を定めることで与えなければならない。つまり、もしこの改正案が可決した場合、今までは権利だったのが義務になるということです。そして、この改正案の対象として検討されているのは、大企業だけでなく、中小企業など、全ての企業がこの有給休暇の指定義務化の対象になることが予想されています。また、正社員だけでなく、アルバイトを含むパート労働者および管理職の従業員も対象となります。中小企業や管理職の従業員は、比較的有給消化率が悪いことが問題視されており、今回の改正法案の対象が広範囲の従業員に対象になるのも、そのような背景を考えてのことと言えるでしょう。
最近では労働者の権利に対する意識はひと昔前に比べて高まっており、安易に「有給なんて認めれない」なんてことをいいますと、労働基準監督署に駆け込まれた場合、確実に不利になりますので、注意が必要です。
ただ、従業員の側も、ただただ権利を主張するのではなく、会社や同僚への配慮をしながら、社会人としての常識的なモラルをもって、行使をすることが必要なのではないのでしょうか。