社会保険の適用拡大(実務上のポイント)について
法改正により平成28年10月1日から厚生年金と健康保険の加入対象が広がることを受け、加入要件や実務上の対応など問い合わせをいただく事が多くなりましたので、要点を整理したいと思います。(過去のコラム2016.1.11を参照)
社会保険が適用されている事業所に使用されている者は、臨時に使用されるもの等を除き、国籍・性別・本人の希望の有無にかかわらず社会保険の被保険者とならなければなりません。
短時間労働者については、「1日または1週間の所定労働時間」および「1カ月の所定労働日数」が、同一事業所で同種の業務に就く通常の労働者のおおむね4分の3以上を満たす場合は、通常使用されていると認められてきました。
平成28年10月1日以降は、「1週間の所定労働時間」および「1カ月の所定労働日数」が通常の労働者の通常の労働者の4分の3以上となります。(4分の3基準を満たさない場合であっても、実際の労働時間または労働日数が直近2カ月において4分の3基準を満たしている場合で、今後も同様の状態が続くと見込まれるときは4分の3を満たすものとして取り扱う)
10月1日以降、この4分の3基準は保ちつつ、さらに短時間労働者が4分の3基準を満たさなかったとしても、下記の4つの要件をすべて満たす場合には「短時間被保険者」として社会保険に加入することになります。
短時間被保険者の資格取得要件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が継続して1年以上みこまれる
- 月額賃金が8万8000円以上
- 学生でない(4分の3以上の基準を満たす者は学生であっても引き続き加入義務あり)
確認事項
収入の要件
・被扶養者の基準(年収130万未満)の基準には変更はないが、年収130万未満であっても上の条件に当てはまる場合は、被扶養者とはならず、社会保険に加入することとなります。年収106万未満である場合であっても、月額賃金が8万8000円以上である場合には他の要件を満たせば加入することとなります。(106万は法律に記載のない数字でありあくまで参考値にすぎない)
月額賃金の要件(「8万8000円」の算定に当たり除外できる賃金)
・臨時に支払われる賃金
・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
・所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外労働手当)
・所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日労働手当)
・深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜労働手当)
・最低賃金に参入しないと定める賃金(精皆勤手当・通勤手当・家族手当)
実務上の対応について
短時間労働者が社会保険への加入を希望しない場合であっても、上記の要件を満たせば強制加入となり、本人の意思にかかわらず強制的に加入させなければなりません。まずは、本人に社会保険に加入するメリットを説明し、納得してもらうことが重要だと考えます。(将来の年金の給付に反映される・保険料を会社が半分負担する等)しかし、本人がどうしても社会保険への加入を希望しない場合には、現在の働き方を変える必要があります。ただ注意したいのは、20時間未満に労働時間を抑えてしまうと、雇用保険の加入要件も満たさなくなってきます。雇用保険は労働者の失業時に重要な所得補償であるため、将来を見据え十分に説明したうえで対応していきたいものです。