賞与支給直前に定年退職。不支給は差別?
2018/03/03
東日本旅客鉄道事件(東京地判 平29.6.29)
【請求内容】
賞与の「支給基準日」の1日前に定年退職した元従業員が、合理性のない差別的取扱いを受けたとして損害賠償を求めた。
【争点】
賞与に支給日在籍要件を設けることは有効か?
【概要】
会社の賃金規程では4月に定年を迎え同月末日で定年退職する者のみ期末手当が支給されない仕組みとされており、これが合理性のない差別的取扱いに該当し、公序良俗であると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、夏季手当相当額の賠償金等の支払を求めたもの。
【確認】
賞与とは次の①、②を併せ持つ。
①労働における報償的な性質。
②将来の労働への意欲向上や将来の貢献への期待という要素。
【判決のポイント】
賞与は将来の労働への意欲向上や将来の貢献への期待という要素を併せ持つもので、企業の業績や従業員の勤務成績等を踏まえて、都度算定されるものであることからすれば、賃金と同視できない。
また、賞与の支給について、支給日に近接した基準日を設け、基準日における在籍要件を設ける取扱いをすることは、一定の合理性が認められる。
以上より、賞与の支給における会社の取扱いが不合理であり公序良俗に反し違法と主張する元従業員らの主張には理由がない。
【SPCの見解】
賃金規程等により、賞与について支給日在籍要件等の一定の基準を定めることは原則的として有効である。
しかし、労働者側に帰責事由などが無い場合(整理解雇や労使間の交渉の遅れによる支給の遅れ等)は、支給日在籍要件がそのまま適用されない場合がある。
使用者側としては支給日在籍要件がそのまま適用されない場合があることを考慮して対処する必要がある。
また、月額給与は社内におけるステイタスと同時に生活給という長期蓄積の色合いが強い。
賞与は、査定期間における貢献度の結果であり短期決算の色合いが強い。
どちらにしても、労務の提供に対する報酬という点では同じである。