「専門業務型」のデザイナー、割増賃金を求める
乙山色彩工房事件 京都地判平29.4.27
【請求内容】
絵画制作や建造物の色彩修復デザイナー4人(労働者)が、専門業務型裁量労働制の適用はないとして割増賃金を求めた。
【争点】
専門業務型裁量労働制を導入する過程で、①協定届出上の過半数代表の選出方法、②制度導入に関する就業規則の周知の有無。 専門業務型裁量制を導入する手続きが、適正に行われていたかが争点となった。
【確認】
専門業務型裁量労働制とは?
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
○制度導入のための手続は?
制度の導入に当たっては、原則として次の事項を労使協定により定めた上で、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
ア)制度の対象とする業務
イ)対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
ウ)労働時間としてみなす時間
エ)対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
オ)対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
カ)協定の有効期間
キ)(エ)及び(オ)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存 すること
【判決のポイント】
①協定届出上の過半数代表の選出方法について。
協定届出上のは選出方法が「推薦」とされているが、労働者らはいずれも代表者を選出する会合や選挙は行っていないとされており、適正な方法で選出されてないと認められる。
②就業規則の周知について。
会社は、労働者がパソコンを使用し、いつでも閲覧可能であったと述べているが、労働組合の団体交渉時にも、そのような説明は一切されていないことからすると、周知の義務を果たしていると認めることはできない。
【SPCの見解】
裁量労働制については、労働者の時間外手当の支給が対象から外れるという、労基法からしても例外的な扱いと成っている。
それ故、対象と成る業務は限られており、制度自体も細かくルール作りがされている。また、導入に関する手続きは厳格かつ慎重に対応することが求められている。
労働者の代表者選出においても、後に選出手続きが適正に行われたという証明ができる明瞭な外形をもって行う必要がある。
このことは、裁量労働制に限らず、36協定や変形労働時間制においても同じ事が言える。