天災地変により従業員を休業させる場合の休業手当は?
地震や台風による豪雨などの災害の被害を被った地域の方へお見舞い申し上げます。こうした天災地変により急遽会社を休業せざるを得ないケースがあり、その場合の休業手当の支払いについて多くのご相談をいただきました。
■休業手当を支払わなければならない場合
使用者の責に帰すべき事由により従業員を休業させる場合、休業手当を支払う義務が課されています。(労基法第26条)
●使用者の責に帰すべき事由、
・機械の検査
・原料の不足
・流通機構の不円滑による資材入手難
・監督官庁の勧告による操業停止
・親会社の経営難のための資金
・資材獲得困難 等が挙げられます。(昭23.6.11基収1998号)これらの場合、平均賃金の100分の60以上で計算した額を支払う必要があります。
■休業手当の支払いが必要ない場合
しかしながら、上記の使用者の責に帰すべき事由とは異なり、天災地変について直接的な被害を受けてその被害が甚大なような場合の休業は不可抗力によるものであり会社の責任で休業させたものではないため、休業手当の支払いは必要はなくなります。休業手当の支払いの必要がないこの『不可抗力』とは、東日本大震災や今回の平成30年7月豪雨などで示されたQ&A(Q1-4)によると、以下の2つの要件を満たすものでなければならないと解釈されています。
●不可抗力が認められる要件
・その原因が事業の外部より発生した事故であること
・事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
取引先や鉄道・道路が天災地変により被害を受け、原材料の仕入れや製品の納入などが不可能となった場合、会社が直接的な被害を受けていないのであれば原則として使用者の責に帰すべき事由に該当するとされ、会社は休業手当の支払いが必要になります。ただし、このケースであっても上記の2つの要件を満たす場合には例外的に会社の責任による休業に該当しないとされています。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があるとされています。(Q1-5)
また、会社が休業手当を支払った場合に、それを支援する制度として雇用調整助成金が設けられています。直近3ヶ月の生産量、売上高などの生産指標が前年同期と比べて一定以上減少していること等の要件があります。大きい被害により長期に渡る休業を余儀なくされる場合には検討する機会もあるかもしれません。
■参考 厚生労働省「平成30年7月豪雨について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00001.html