一括有期事業の手続きの改正
2019年4月より、一括有期事業の手続きについての改正が施行されます。
一括有期事業とは、建設の事業や立木の伐採の事業において、同一事業主であり一定の要件を要する2以上の小規模の単独有期事業が法律上当然に一括されて全体が一の事業とみなされ、継続事業と同様の方法で適用される制度をいいます。一定の要件とは、建設の事業においては、一工事の請負額が1億8千万円未満かつ概算保険料額が160万円未満の場合、立木の伐採の事業にあっては、素材の見込生産量が1,000立方メートル未満でかつ概算保険料額が160万円未満の場合です。本来、建設の事業においては、一つの工事それぞれについて労働保険料の申告を行うのが原則であるところ、小規模な工事については、申告事務が非常に煩雑となるため、一定の小規模な工事についてはまとめて届け出ることができる制度です。ただし、この制度には、地域要件があり、全国すべての工事をまとめていいというわけではなく、隣接県や厚生労働大臣が指定した都道府県の区域で行う工事のみしか一括することができないというしばりがありました。今回の改正では次の2つの改正が行われました。
1・一括有期事業にかかる地域要件が廃止されます。
全国で工事を行っている場合、今までは、地域要件があることにより、例えば、関東の隣接県で申告納付、 中部の隣接県で申告納付、関西の隣接県で申告納付等、地域ごとに別々に申告納付をしなければならなかったのですが、改正により、一括できる小規模な工事のみであれば、本社で一括して申告納付ができるようになりました。
2・一括有期事業を開始したときに事業主が労働基準監督署に提出しなければならない一括有期事業開始届が廃止されます。
一括有期事業開始届とは、前月中に開始した工事について、毎月10日までに事務所の所在地を管轄する労働基準監督署に報告する届出のことを言います。この開始届には、開始される1か月の有期事業の元請工事をすべてかかなければいけないのですが、工事の多い企業では、毎月それらの工事を取りまとめて記載及び提出することはとても手間のかかることであります。
今回の改正により、一括有期事業開始届が廃止され、一括有期事業の工事についての報告は、6月1日から7月10日までに行う労働保険の年度更新の際に、「一括有期事業報告書」にて報告すればよいことになりました。
国は、行政手続きの簡素化としていくつかの目的をあげています。今回は一括有期事業手続の簡素化についてお伝えしましたが、他にも「行政手続きの電子化」「添付書類の省略化」「署名押印の省略化」などといった行政手続のコストを削減する取り組みが進められています。
今後、今までルーティン業務として行っていた業務が不要になると、企業としては、業務量の削減化・業務の効率化につなげることができます。企業としては、行政手続きの簡素化に伴い、業務の内容の見直しを行う機会になるのではないでしょうか。