交際を求めるメールはセクハラ、会社に厳罰、損害金を要求。
X…被害者 Y…会社 A…行為者 B…取締役営業部長
【 事案の概要 】
Xは平成24年10月頃にAから交際を申し込まれ、回答しなかった。
その後は、メールの送信や旅行の土産を渡すなどしたが、25年3月以降は交際を求めるような連絡はしなかった。
Yは1事業所であり、XとAはフロアが異なるが、納品の伝票の受け渡し程度の関りが業務の中であった。
Xは平成25年9月頃にYに相談し、BがAに事実確認を行い、現在はメールをしていない旨を携帯にて確認した。今後についてもメールの送信しないことと、謝罪するよう指導を行った。
しかし、Xは自身の配置転換や業務内容の変更、またはAの退職を求めたが、満足のいく実施がされず、平成28年9月に退職した。
その後、XはYに対して、安全配慮義務違反等により精神的苦痛を被ったっとして、損害金904万円および遅延損害金を求めて提訴した。
【判決のポイント】
【 争点 】
- Yとしての事実関係の調査義務
- Aに対する懲戒処分を行うYの義務
- 配置転換の義務
- 二次被害
【 判決 】
- Yとしては、Xからの相談後すぐに事実関係の調査、携帯の確認をするなど対応をした。
- Aの行為自体はストーカー行為に該当するとは言えず、Yからの注意およびXへの謝罪し、Xもこれを了とした。厳重注意処分としたYの判断が不合理とは言えない。
- Aに対する厳重注意や、AからXに対する謝罪およびそれ以後不快な言動等されていないこと。また、Yの事業所は一つしかなく、配転することは困難であり、業務上の接触の機会についても、納品伝票の受け渡しを伝票箱に変更したり、担当者自体を交代するといったYとして可能な限りの対応をしていた。
- BはXに対して、「Xが努力すべき。」と言葉を浴びせているが、証拠に照らし合わせてそのような事実は確認されない。
以上より、事実関係の調査や対応を適切に行い、行為自体もストーカー行為に該当せず、謝罪を受け入れるなど、会社として懲戒処分が不要と判断したのは不合理といえないと判決を下した。
【SPCの見解】
【 まとめ 】
事業主が雇用管理上講ずべき措置として、10の指針があります。
- セクハラに対する方針の明確化と周知、啓発
- 行為者への厳正な対処方針と規程化と周知、啓発
- 相談に対する体制の整備(相談窓口の設置)
- 相談に対する適切な対応
- 事実の迅速かつ正確な確認
- 被害者に対する適切な配慮
- 行為者に対する適切な措置
- 再発防止策の実施
- 当事者のプライバシー保護の実施と周知
- 相談や協力者への不利益取り扱いの禁止
パワハラ同様にセクハラについても今まで以上に適切な対応が求められます。
判例のように比較的悪質性の低い事案についても、会社として適切な対応を行い、会社の責任を問われないようにしていくことが大切となります。(特に、事実調査をしっかりと実行し、放置しないことが重要)
判例についても、迅速な事実確認、伝票箱の設置、携帯の送信メールの確認、行為者への注意を行い、少なくとも④、⑤、⑥、⑦はできていたと裁判でも認められました。
配転が困難や被害者の厳罰要請がある中で、可能な限りの対応を行った事案として参考となります。