新型コロナウイルス感染症における労災請求について
2020/08/17
5月に緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開されていく中で、新型コロナウイルスが再拡大しつつあります。
それに伴い、新型コロナに関する労災請求件数も増加しています。
厚生労働省では、7月15日時点で新型コロナウイルスにかかわる労災補償状況と認定事例を明らかにしています。
その後、毎週1回更新されている状況です。
令和2年8月12日現在、新型コロナに関する労災の請求件数は873件、うち死亡に関する件数は14件です。
請求件数のうち、支給決定件数は354件、うち死亡に関する件数は2件でした。
業種別の内訳をみると、請求件数と支給決定件数ともに8割以上が医療従事者等になります。
当たり前ですが、感染者と接する機会が多いためと考えられます。
では、具体的に支給決定のあった事例は以下の通りです。
(1)医療従事者等の事例(看護師)
日々多数の患者に対して問診、採血等の看護業務に従事していた。その後、頭痛や発熱の症状があったため、検査し新型コロナ感染の陽性と判定された。
労基署の個別調査により、業務外で感染したことが明らかではなかったため、労災認定された。
(2)医療従事者等以外の事例(建設現場作業員)
勤務中に同僚の作業員と同乗していたところ、後日その同僚が新型コロナウイルスに感染していることが判明した。その後、同様に発熱等の症状がみられたため検査したところ、新型コロナウイルス陽性と診断された。
労働基準監督署の調査より、この同僚以外の感染者との接触は確認されず、感染経路が特定された。
感染源が業務に内在していたことが明らかであり、労災認定された。
(3)医療従事者等以外の事例(タクシー乗務員)
タクシー業務に従事し、発症前の業務内容に関しても不特定多数の海外からの旅行客を乗客輸送しており、感染リスクが相対的に高いと考えられた。
労働基準監督署の調査より、発症前14日間の業務外の行動(=私生活)は日々の日用品の買い出しなど、感染リスクは低かった。
感染経路は特定されないが、業務内容から感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから労災認定された。
同じような形の事案で、小売店販売員の労災認定もされたケースもあります。
どの事案も従事する業務内容と業務外での行動(いわゆる、感染リスク)を総合的に勘案し、労災認定されました。
業務にて陽性患者に接する場合や、集団感染が起きた場合など、感染経路が業務に関係していると判断できる時には、比較的労災の認定もされやすくなります。
感染経路が特定されない場合であっても、認定されるケースはあります。
事例のような、タクシー乗務員や販売員のような接客業に従事して、多数の顧客と接する機会が多ければ、業務との関連性(業務起因性)があると判断される可能性が高くなります。
目に見えないウイルスである以上、現状では完璧に感染を防止することは難しいかもしれませんが、今一度しっかりと感染防止を徹底する必要があります。
そのことが、安心安全な職場環境の構築の一歩になるかもしれません。