労災認定後に会社責任認容
【仙台高判 令2.1.28】
うつ病を発症して自殺したのは、長時間労働が原因として遺族が損害賠償を求めた。一審では、月の平均残業は80時間を下回るなどとして、請求を棄却した。
その後、適応障害と労災認定されたのちの控訴審である。
会社は自動車の仕入れや修理等を目的とする株式会社である。
Xは平成27年4月に会社に雇用され、主に自動車整備作業の業務に従事していた。
会社の就業時間は8時30分~17時00分までの7時間30分間(1時間休憩)で、1年単位の変形労働時間制を採用している。労働時間の管理は各従業員が就業時間報告書に記入し、上司の確認印を受ける方法を取っていた。
平成28年4月16日社内(営業所)で首をつっているのが見つかり、5月9日に死亡した。
Xの相続人は、甲の自殺は長時間労働が原因であるとして、会社に対して安全配慮義務違反があり不法行為責任または雇用契約上の債務不履行責任に基づき9000万えんの損害賠償を求めて提起した。
一審判決では、長時間労働と自殺との相当因果関係を認めず請求を棄却した。
一審判決後にの平成30年12月に、八戸労働基準監督署は、甲は平成28年1月頃に業務に起因して適応障害を発症し、これに起因して自殺に至ったと労災認定された。
以上の事情を受けての控訴審である。
【判決のポイント】
(1)自殺と長時間労働の業務起因性の有無
平成28年1月に適応障害を発症したところ、その後も長時間労働が続き、特に決算月の3月はより多くの長時間労働を余儀なくされたことが推認できる。
また平成28年4月16日に先輩従業員から叱責されたことにも反応して、自殺を図るに至ったことも認められる。
(2)会社の安全配慮義務違反の有無
Xが適応障害は発症し、自殺に至った点については、Xの上司らが本来であれば業務量や質に配慮する必要があったところ、長時間労働の削減するなど対応を取らなかったことに要因がある。
上司らはXの指揮監督者として安全配慮義務に違反したといえ、会社は使用者責任に基づき、Xら遺族に損害賠償責任を負う。
(3)損害額
逸失利益は、基礎収入をもとに算出し、4196万124円とする。
【SPCの見解】
うつ病など精神障害の場合、会社としてはどのように対応・配慮すればいいか苦慮することが多いかと思います。
本件も、放置したことも要因となって自殺に至ったものと思われます。
会社側の2大義務の1つに安全配慮義務があります。義務違反が認められると、使用者責任も問われることにも繋がります。
会社としては、労働時間の適切な把握・記録を行い、長時間労働の抑制、業務の負荷に対する配慮など労務管理上の適正化が今後より求められます。
精神障害発症した際も、病院への受診を行い、医学的見地からのアドバイスを頂きながら、必要に応じて休職制度利用、時短勤務、配置転換、残業時間の削減などの対応をご検討ください。