産業雇用安定助成金の創設について
「雇用調整助成金」の特例措置は2021年2月まで延長することになり、2021年3月からは段階的に縮減していくことになります。それに代わり「産業雇用安定助成金」(仮称)という新しい助成金が創設されることになりました。ただし、現時点では予定であるため、名称も仮称であり、今後、内容が変更になる可能性もあります。今回は、現時点で公表されている制度の内容をお伝えしたいと思います。
「産業雇用安定助成金」とは、これまでの「雇用調整助成金」と同様、新型コロナウイルス感染症の影響により仕事が減少し、雇用の維持が困難になった企業の労働者の雇用を守るための制度です。仕事が減少した企業が、自社の労働者を、仕事があるけれど人手が足りない企業へ、労働者を出向させる制度です。つまり、2つの企業間で雇用のシェア(在籍型出向)をすることになり、雇用を維持する取組みを支援する制度です。送り出し企業と受け入れ企業がマッチングして、それぞれの企業にメリットがあります。
これまでの「雇用調整助成金」の場合も、労働者を出向させた場合、助成金の対象としていましたが、出向元だけが助成金を受ける対象になっており、また、助成額も休業させた場合より低い助成額でした。それに対して「産業雇用安定助成金」は、出向元だけではなく出向先にも助成金が支払われ、助成額も雇用調整助成金の特例措置と大きな差が生じないよう調整していくものとみられます。
〇助成内容等
対象労働者に係る経費について、出向元事業主と出向先事業主とが共同事業主として支給申請を行い、当該申請に基づき、以下の費用の一部が双方へ助成されます。
1・出向運営経費 出向労働者(雇用保険被保険者)の賃金・教育訓練及び労務管理に関する調整費用等、出向中に要する経費の一部が助成されます。
助成額
出向元が労働者の解雇等を行っていない場合 中小企業 9/10 中小企業以外 3/4
出向元が労働者の解雇等を行っている場合 中小企業 4/5 中小企業以外 2/3
上限額 1日12,000円
2・出向初期経費 出向契約をするにあたっての就業規則や出向契約書の整備費用、出向元であらかじめ行う教育訓練費用、出向先が出向者を受け入れるために用意する備品費用等の初期費用が助成されます。
助成額 出向元事業主・出向先事業主 各10万円/ 一人当たり(定額)
加算額 出向元事業主または出向先事業主がそれぞれ一定の要件を満たす場合に加算があります。 各5万円/1人当たり(定額)
制度の創設には、第三次補正予算の成立、厚生労働省令の改正等が必要であるため、現時点ではあくまでも予定であり、詳細については今後の発表を待ちたいと思います。