交通事故で障害を負う、賠償金を毎月受け取りたい
損害賠償請求事件 【最三小判 令和2.10.13】
交通事故で脳挫傷を負った子の両親が、保険会社らに月1回の定期的な損害賠償を求めた事案。
被害者X(当時4歳)は、Yの運転する大型貨物自動車による事故で、脳座礁等の障害を負い、後遺症が残り、労働力を全部喪失した。
Xは、後遺障害よる逸失利益について、Yの車両の所有者Y2および保険会社Y3に、18歳から67歳までの就労可能期間の損害について、一時金ではなく、定期払いを求めて提訴した。
札幌高裁では定期払いを認めるのが相当であるとして、これを不服としてYらは上告した。
【判決のポイント】
民法では、不法行為に基づく損害賠償の方法につき、一時金で支給するものとは規定していない。不法行為に基づく損害賠償制度の目的と理念に照らすと、交通事故に起因する後遺障害による逸失利益という損害につき、将来的に取得すべき利益の喪失が具現化する都度、これい対応する定期金の支払いをさせるとともに、乖離が生ずる場合には民訴法117条によりその是正図ることができるようにするのが相当である。
人身事故による損害賠償額については算定基準・算定方法が確立されてきた。後遺障害による逸失利益についても、一時金で支払う方法が確立されていた。しかし、一時金で支払う場合は、結局は蓋然性に基づく将来予想等であり、実際の損害と乖離する場合がある。
また一時金で受け取る場合、中間利息控除の問題もあり、被害者にとっては一時金ではなく、定期払の方がメリットが大きいと思われる。今後も定期払いでの請求の増加が予想される。
【SPCの見解】
◇定期金と一時金の受領額に大きな差がでるのはなぜ?
・一時金賠償では「中間利息控除」がなされるため。
↑将来受け取るべきお金を前払いしてもらう場合
に、将来に渡って発生するはずの利息分を差引くこと。
※令和2年3月31日までに生じた事故は年利5%
※令和2年4月1日以降年利3% 以降3年毎の見直し。
・被害者が労働時期に達していない児童である。
症状固定時の10歳から、実際に就労をし始め、収入を得る18歳までの8年間の中間利息が差引かれる為。
<月額収入算定根拠>
・事故当時4歳(症状固定時10歳)
・症状固定時である平成24年の賃金センサスより
→男性学歴計全年齢平均額 529万6800円
→被害者過失相殺率20%を減額
529万6800円÷12ヶ月=44万1400円
44万1400円×80%=35万3120円(月額)
◆定期金賠償
35万3120円×12ヶ月×49年=2億0763万4560円
→労働開始年18歳~労働可能年限67歳の49年間の受給額
◆一時金賠償
・基礎収入:529万6800円
・労働能力喪失率:100%
・労働能力喪失期間:49年(18歳~67歳)
症状固定時10歳
中間利息控除・ライプニッツ係数(中間利息5%):12.2973※
18.7605(67歳-10歳の57年)-6.4632(18歳-10歳の8年)↑
・計算式
529万6800円×100%×12.2973=6511万7270円