「スモールチェンジ」を忘れずに
2021/09/17
今年も「健康経営」の調査票提出が始まりましたね。当社も、「健康経営優良法人(中小規模法人部門)2022」の認定に向けて、調査票作成に取り掛かりました。
健康経営にまつわるセミナーも最近では多く見受けられ、コロナ禍も重なって、東京などの遠方開催のセミナーにもWeb参加できるため、私もいくつかのセミナーに参加しました。
ここで改めて、健康経営とは…、
“従業員等の健康保持・増進を経営的な視点で考え、戦略的に実践することで、従業員のヤル気アップやパフォーマンス向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に会社の業績向上や企業価値の向上へ繋がる”
と期待される経営手法のことです。
先日参加したセミナーで、この初心を改めて思い出させられました。経営者の「健康宣言」から始まる健康経営ですが、認証取得にばかり焦点を当ててしまうと、会社の最終目標である生産性向上・業績向上が、いつまで経っても成果として表れません。
確かに、コロナ禍もあって「健康経営」が注目され、2021認定企業も前年の約1.64倍の7,934社と急激に増えました。
健康経営は「スモールチェンジ」がキーワードでもあるため、取り組んですぐに目に見えて成果が表れるものではなく、健康経営に取り組んでいる多くの経営者や健康経営担当者から『当社は本当に活性化に近づいているのか』という不安の声も出始めているとのことでした。
調査項目も、数値化を求められる内容も増え、単に「やっている」レベルでは、本当の意味での健康経営が遠いものだと感じざるを得ない方向にも動いています。
しかしながら、数年取組みを続ける中で、労働関連の基準法令である労働基準法や、労働安全衛生法などの法令、働き方改革、SDGsなどと健康経営は関連していることを実感しており、それぞれの点が線になることで、決して難しいものでも、1から始めるものでもないことも理解できるようになりました。健康経営のキーパーソンが社会保険労務士であると言われる理由もよくわかります。
最近の労働裁判でもよく争われている「安全(健康)配慮義務」という言葉も、世間に広く知られるものになりましたが、「安全(健康)配慮義務」が会社側に問われるものに対して、労働者側には「自己保健義務」が求められます。
自己保健義務とは、労働者自身が“自分の健康状態に注意して、必要に応じて医療機関を受診するなどして、健康に留意しましょう。”と言われているものです。会社側が、いくら従業員の健康に留意していたとしても、従業員が自身の健康問題に無関心では、健康保持・増進には繋がりません。
この2つの義務も、健康経営に大きく関連しているわけですが、健康経営に取り組むことで、従業員に健康への意識付けをすることは、スタートラインであると同時に、実は一番難しいことかもしれません。
これまでのように、自身の健康はプライベートの範疇で「会社にとやかく言われる筋合いはない」という考えが根強いほど、健康経営が浸透しづらく、成果が全く表れていないと感じられる要因にも繋がります。
だからこそ、数値目標を掲げることで成果が見えれば、自社の健康経営が少しずつでも達成できているという自信にも繋がっていき、取り組む面白さも増してくるのではないでしょうか。その先に見えてくるのが、業績向上による会社の成長です。そしてもっと先にある国の目的の、医療保険の適正化にも繋がるのでしょう。人生100年時代の到来です。
中小企業向けの健康経営は、2017年に始まったばかりです。今一度、自社の健康課題を洗い出し、「人」という大切な資源である従業員により長く戦力として働き続けてもらえるような職場環境を提供し、従業員の皆さんは、在職中の健康はもちろんのこと、引退後のシルバーライフも活き活きと過ごせるよう、働き方を見直して、ワークエンゲージメントの高い職業人生を楽しみましょう。
健康経営の実践内容は、各社・各事業所それぞれ異なるものなので、今はまだ模索状態なのではないでしょうか。「スモールチェンジ」のキーワードを忘れず、焦らず少しずつ進んで行きましょう。
私も、健康経営アドバイザーとして、多くの会社の健康経営に携われるよう、今後も多くのセミナーに参加して見識を深め、日々勉強を続けていきます。