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会社の存在意義

   

世界銀行によると、2050年までに世界の廃棄物発生量は2020年と比べて7割増の年39億トンに達するという。莫大なエネルギー消費は、地球温暖化という形で社会の存在すら脅かすという。

社会との分断に危機感を募らせた米経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルは、2019年、「パーパスの再定義」を呼びかけた。

「パーパス」は「社会での存在意義」を意味する。我が社は何のために世にあるのか。世界の多くの会社が問われている。

ルーセントドアーズ代表取締役黒田真行氏によると、20代後半から30代前半の若手社員が閉塞感を感じる企業の5つの特徴を挙げている。

1. 集団としての同質性が高い=プロパー社員が多く、学歴や考え方、価値観、行動パターンの同質性が高い。

2. 古い価値観にこだわり、新しい価値観を拒絶しがち=伝統が価値観の根底にあるため、従来の考え方を変えにくい。行動変容を迫られるような新しい習慣や概念を遠ざける傾向がある。

3. 過去の成功体験に固執し、既得権を手放さない=「これまでそうやって成功してきた」「過去失敗したことには手を出さない」。既得権にしがみつき、新陳代謝を好まない。

4. 階層序列の意識が強く、上に弱く下に強い=年齢や役職、学齢などをもとにした関係性の序列に敏感。基本的に強い者に弱く、弱い者に強い。

5. よそ者や新参者を認めず、排他的な態度をとる=「同じ釜の飯」の仲間を重視する反動で、外部の人間や新参者に厳しく、受け入れるまでには時間を要する。

日本は豊かである。公衆トイレが公共施設に完備され、飲める水が無料で用意されている。ATMが無人店に置かれ、自動販売機が過疎地にまで設置されている。その中で育ってきた若手社員は、会社の利益を経営者が過大に享受したり、過度に株主に還元することを良しとしない。社会への貢献や存在意義を明確に示してくれるよう声をあげ始めた。これだけデジタル化が進むと、若手社員無しには会社は立ちいかない。会社の存続と成長のためには理念を掲げ、約束を守る経営をしていかなければ、若手社員にはいち早く脱出されてしまう。そうならないために、今一度、会社の存在意義を試行してみる必要がある。思考ではない、行動による試みである。

アルツハイマー型認知症の原因物資を取り除く世界初の治療薬を実用化したエーザイは、開発社員の年間勤務時間の1%を使って、高齢者施設を訪ねさせるという。「新薬が出来るまで頑張る」と話す患者の声が一番のモチベーションになると社長の内藤氏は言う。「患者を助けることを第一義とし、その結果として売上、利益がもたらされる」の理念を実践している。

エーザイほどの会社だから可能なのではない。社会のために何をなすのか。それこそが大小問わずすべての会社のぶれない生き残り戦略となる。

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