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懲戒処分後に発覚した非違行為を処分理由に追加できるか?

      2016/02/23

ニューロング事件 【東京地判 2012/10/11】
原告:労働者Ⅹ  /  被告:会社Y

【請求内容】
自ら退職届を提出したにもかかわらず、退職日到来前に懲戒解雇されたことは無効であり、退職金等を請求した。

【争  点】
懲戒解雇当時、会社が認識していなかった事実を懲戒解雇が有効と主張するための理由として後から追加できるか?

【判  決】
懲戒当時認識していなかった行為は原則として懲戒の根拠とはできず、懲戒解雇無効・退職金は加給金を除き認容

【概  要】
ⅩがY社に退職届を提出したにもかかわらず、その効力が発生する前にY社がⅩを懲戒解雇し、退職金を全額不支給とした。Y社は、懲戒解雇を行った当時に告知した懲戒事由の他に、裁判にて追加の懲戒事由を主張して懲戒解雇の有効性を根拠付けようとした。本件懲戒解雇は、原告が自主退職の意思表示をしたことを受けて急遽行われたものであり、Ⅹに弁明の機会を付与していなかった。Ⅹは退職金・功労加給金・損害賠償等を請求して提訴した。

【確  認】
【懲戒処分事由の事後的追加について】<山口観光事件 最一小判 H8.9.26>
具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。
<富士見交通事件 東京高判 H13.9.12>
懲戒当時に使用者が認識していた非違行為であって、以下のような場合は、当該懲戒の有効性を根拠付けることができる。(たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても)
①告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められる場合
②告知された非違行為と密接な関連性を有するものである場合

 

【判決のポイント】

■「いじめ・嫌がらせ」に関する労働局への相談は年々増加しており、職場でのいじめ等により精神障害を発症し、労災を申請するケースも増加している。パワハラについては「業務上必要な指導」と「過度な精神的攻撃」の境界線があいまいであり判断が難しいところであるが、本件のように、ノルマ未達成に対する罰としては適切とはいえない手段で、また人によっては、コスプレに対して過度に羞恥心を感じる可能性も想定できるにもかかわらず(立場上断りにくい)Ⅹに強要したことはやはり問題であったといえる。パワハラを過剰に意識して萎縮する必要はないが、少なくとも指導する場合やペナルティを与える場合は、適切な手段・程度で行うよう心がけるべきである。

労働新聞 2013/10/28/2942号より

【SPCの見解】

■本件は、非違行為を行った労働者が自主退職しようとしたため、急遽懲戒解雇をしたという案件である。そのため解雇手続きにも不備があり、懲戒解雇事由も処分時に全てしっかりと把握することができなかったと思われる。もし懲戒解雇後に発覚した事実も含めて検討できたら、結論はまた違ったものになったかもしれないが、処分時に知らなかった事実を後から追加するというのはやはり無理があろう。退職金の不支給(または減額)をしたい場合は、焦って不備のある懲戒解雇をするよりも、退職後も退職金支給の有無を検討できる規定を就業規則に盛り込んでおく方が良いと思われる。⇒(※例文)「退職後に一定の懲戒事由が判明したときは退職金を支給しない」など。

労働新聞 2013/10/21/2941号より

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