配偶者加給年金の改正
2022/04/25
令和2年 6月 5 日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布されてから、公的年金から私的年金まで多岐にわたる改正が随時行われています。
今回はその中でも「配偶者加給年金」についての改正について触れていきます。
「配偶者加給年金」は、厚生年金の被保険者期間を20年以上有する人が、その者によって生計を維持されている65歳未満の配偶者(前年の収入が850万円未満であること)や18歳到達の年度末までの子、20歳未満の1・2級の障害のある子がいる場合に以下の時点で老齢厚生年金に加算される年金です。
・老齢厚生年金を受給するようになった65歳時点、または定額部分支給開始年齢到達時点
・厚生年金保険の被保険者資格を喪失した時点
・老齢厚生年金の受給権が生じた65歳時点では厚生年金保険加入期間が20年に満たなか
ったものの、65歳以上も継続して厚生年金保険に加入し、在職定時改定によって70歳になるまでの間に20年以上となった時点
厚生年金保険に20年以上加入していることが要件となりますので、生涯自営業で国民年金の加入だけであった場合は加算がありません。
現行制度の配偶者加給年金は、配偶者の特別支給の老齢厚生年金が一部でも支給されている場合には加給年金が支給されない一方で、配偶者の報酬額が高い為に在職老齢年金制度により特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になっている場合には、加給年金が支給されるという不合理が生じていました。
上記の内容を以下の要件で考えてみましょう。
①夫:67歳
老齢厚生年金受給中
妻:63歳 … 特別支給の老齢厚生年金:50千円(月額)、標準報酬月額:550千円
特別支給の老齢厚生年金は在職老齢年金制度により全額支給停止中
→夫に配偶者加給年金(388,900円)が加算される。
②夫:67歳
老齢厚生年金受給中
妻:63歳 … 特別支給の老齢厚生年金:50千円(月額)、標準報酬月額:300千円
特別支給の老齢厚生年金を満額受給中
→夫に配偶者加給年金(388,900円)が加算されない。
このような不合理を解消する為、令和4年4月1日より、妻が特別支給の老齢厚生年金等、老齢または退職を支給事由とする年金の受給権を有する場合、その全額が停止されている場合でも、加給年金額が支給停止される改正が施行されました。
ただし、経過措置として令和4年3月31日において加給年金額が加算されている受給権者であって、この改正によって加給年金額が支給停止となる人については、この改正による加給年金額の支給停止は行われません。
妻の離職後、特別支給の老齢厚生年金が雇用保険の基本手当(失業手当)との調整で全額停止になり、夫が受給している老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算される場合も経過措置の対象となります。
今回は具体的な年齢と報酬額を一例として挙げましたが、個々の事例については年金事務所の相談窓口をご利用いただくと良いでしょう。
日本年金機構:加給年金と振替加算
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html
日本年金機構:加給年金の支給停止規定の見直し
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0401.files/04_0401kakyuu.pdf