リファラル採用について
2022/06/03
梅雨入り前にして真夏日が到来し、「去年のこの時期は何を着てたっけ?」と、毎年同じことを思っているなと思う今日この頃です。
さて、先日の中日新聞1面に「トヨタ 社会人採用5割へ」という大きな記事が載っていました。新卒採用を中心に行ってきた採用活動を、即戦力となる社会人経験者へと転換するという内容の記事です。
そこで出てきたワード、「リファラル採用」について紹介します。
リファラル採用とは、推薦や紹介を意味する英語「REFERRAL」からきており、自社の社員から友人や知人を紹介してもう社員紹介採用のことです。自社のことを熟知する社員が紹介するためミスマッチングも起こりづらく、自社を高く評価しているからこそ大切な友人の紹介へと繋がるので定着率の高さも期待されます。
そして、企業にとっては、求人広告などの採用コストを抑えられるというメリットもあります。優秀な社員から、適材適所の人材紹介があれば、即戦力ともなり、事業拡大計画も一気に進むのではないでしょうか。
生産年齢人口の減少が懸念される中、早めに人材の確保に動き出さなければ、気付いた時には事業が回らず、事業廃止も考えねばならない事態に陥るかもしれないという危機感が必要です。
昔は毎年のように新卒採用が予定数できていた中小企業も、最近では内定を出しても、最終的に大手企業に入社を決める新卒者も増え、予定数の半数近くしか集まらなくなってきたという声も聞きます。
私たち働き手も、昔のように「定年まで骨を埋めるつもりで」と入社する人も減り、転職することが恥ずかしいと思われていた時代から、転職することがむしろスキルアップと言われる時代へとシフトチェンジしてきました。テレビでも、転職サイトのCMを目にしない日はありません。
昨年の4月から301人以上の企業に義務付けられている「正規雇用労働者の中途採用比率の公表」も少なからず影響していると思われますが、中途採用に早くから切替えて力を入れてきた中小企業は、今後は、リファラル採用を導入する大手企業に苦戦を強いられるのでしょうか。ただ漠然と人手が足りないから採用するというのではなく、どんな人材にどんな仕事をしてもらいたいのか、具体的にイメージして採用活動をすることが、今後はますます重要となってくることでしょう。
HR総研の”「キャリア採用」に関する調査 結果報告”では、キャリア採用をしている企業における募集職種について、大企業では「IT関連職(AI・データ分析除く)」が最多で63%、次いで「営業職」が54%、中小企業では「営業職」が最多で45%、次いで「経理・財務」が24%となっています。大企業は、DX推進を始めとした大規模なイノベーションに注力している傾向にあるようで、自社にないスキルの獲得への動きが活発なことが伺えます。
リファラル採用では、採用が決まった時や採用後半年が経過した時などに、紹介者である社員に報酬を支払うインセンティブ制度を設けている企業もあります。もちろんトヨタでも、報奨金制度を新たに設けると載っていました。
ここで、気を付けなければならない点は、職業紹介を行うには許可が必要であり、これは職業安定法第30条第1項に定められています。多くの社員が紹介業の許可を得ていないところ、紹介料として報酬や対価を支払うことは職業安定法第40条違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるリスクがあります。
違反とならないためにも、紹介者である社員への紹介料は給与として、支払い時期、支払額、支払い条件などを『就業規則』や『賃金規程』にあらかじめ規定をします。社員が紹介料目当てに、本業よりも紹介活動を優先しないように、紹介人数を「3人まで」などの制限を設けることも必要かもしれません。そして、労働基準法第106条の法令の周知義務にあるように、単に規定するだけでなく、労働者に周知させることも大切な手続きです。
トヨタの記事が新聞1面を飾ったことで、各社の採用活動の見直しが急速に進むかもしれませんね。