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日本列島が無人になる日

      2022/06/04

日本の人口動態統計の速報値をもとに日本総研が推定した2021年の出生数は、81万人(厚生労働省人口動態統計と一致)。同じく2021年の死亡数は、142万人(同統計では約144万人)。その差61万人。この状態が続けば、日本の総人口はおよそ200年後に1千万人を切り、2340年に100万人を、2490年に10万人を割り、3300年には列島が無人になるといわれています。
15歳~49歳までの女性の年齢別出生率を合計した合計特殊出生率は、2016年には、1.44であったものが、2021年には1.30となりました。出生率が1.3を下回る状態を多くの人口学者は「超少子化」と呼ぶそうです。
少子化の原因は、まず年収の低下にあります。有期雇用者の数は、15歳~64歳までの生産年齢人口の約4割を占め、その平均年収は、おおよそ200万です。200万円同士が結婚しても400万円。これでは子供をつくるには躊躇します。さらに無期雇用者男子の2016年と2021年の年収比較(DODAエージェントサービスデータ)は次の通りです。
29歳 435万円⇒423万円
30歳 450万円⇒435万円
31歳 470万円⇒447万円
32歳 485万円⇒457万円
33歳 500万円⇒469万円
34歳 499万円⇒478万円
35歳 510万円⇒488万円
平均で、年24万円減少しています。 国力維持には子供2人が理想とされる中、1人で十分の意識が芽生えてきそうです。
次に考えられるのは、保育所の数です。令和3年4月1日時点で公表された厚生労働省子ども家庭局保育課の資料では、保育所利用定員が302万人(前年比5万人の増加)、保育所を利用する児童の数は274万人(前年比5千人の増加)で、待機児童数が前年比6805人減少して、5634人となりました。あと5万人保育所利用定員が増加すれば、待機児童はいなくなるかもしれませんが、保母さんの増員が可能かどうか、つまり、保母さんや幼稚園の先生の給与を引き上げることが出来るかどうかです。
最後には、子ども向け社会保障支出です。国際労働機関(ILO)の2017年のリポートから日本経済新聞が作成したデータを見ると、日本は対GDPに占める割合は、世界平均の1.1%(約3兆円)。一番のイギリスは3.8%(約6兆円)。GDPの大きさにもよりますが、せめて、イギリス並みにするためには、2.2%程度にはもっていく必要があります。防衛費2%を優先する風潮では無理だとは思いますが。

子供の出生の問題は、とても繊細で難しい課題です。安易に論じることは控えないといけません。その中で、企業は、配偶者手当から子ども手当へと金額のシフトを考慮したり、自治体は、独自の子供出生祝い金を捻出したり、大人と子供がともに楽しめる古民家の提供を働きかけたりと動き出してはいます。日本列島が無人にならないように、世界から日本人が居なくなってしまわないように、今できることを個々人が考える時代がこれからも続いていきます。日本人が日本に誇りをもって人間としての存在意義を次世代に語りついていくことが求められているような気がします。

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