中小企業の月60時間を超える時間外労働の割増率の引き上げ
2022/12/19
令和5年4月1日より、これまで中小企業への適用が猶予されていた1ヵ月の法定時間外労働が60時間を超えた場合の割増賃金率が25%以上から50%以上(通常の割増率25%以上+60時間超の割増率25%以上)へ引き上げられます。
大企業については既に平成22年4月1日より適用が開始されてきましたが、中小企業への猶予期間も終わり、いよいよ対応が必要となります。
実務上のポイントとしては、①賃金規程(給与規定)および36協定届への記載、②自社管理システムの点検が挙げられます。
- 賃金規程および36協定届への記載
賃金規程の割増賃金に係る条文については法定時間外労働が60時間を超えた場合の割増率を定めておく必要があり、4月以降に提出する36協定届の特別条項においても60時間を超える見込みがある場合は50%以上の割増率を定める必要があります。
- 自社管理システムの点検
50%以上の割増率が必要になる時間は、法定時間外労働が60時間を超えた部分になるため、60時間以下と60時間超の時間数を分けて集計していきます。
また、50%以上の割増率が必要になる時間は法定時間外労働になりますので、所定時間外労働や法定休日労働の時間数などひっくるめて集計している場合は、その点も含めてご注意ください。
■代替休暇の取得
冒頭に60時間を超えた場合の割増賃金率は50%以上(通常の割増率25%以上+60時間超の割増率25%以上)とお伝えしましたが、労使協定の締結により60時間超の割増率25%の支払いに代えて代替休暇を付与する方法もあります。
労使協定で定める事項は、代替休暇の時間数の具体的な算定方法・代替休暇の単位・代替休暇を与えることができる期間などになります。
具体例として、法定時間外労働を76時間、割増率を通常25%、60時間超の割増率25%とした場合に
計算式:(76時間-60時間)×(50%-25%)=4時間
労働者が4時間の代替休暇を取得した場合、16時間分については60時間超の割増率25%は不要になります。ただし、通常の割増率25%は必要になりますので、ご留意ください。
なお、この代替休暇の取得については、大企業についても可能になります。
厚生労働省/「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます。」リーフレット
https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/001285512.pdf