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有期契約の更新について

   

有期契約の更新について、会社が従前より従業員に不利な労働条件を提示し、従業員がその労働条件に不満で、結局、契約の再締結に至らず雇用関係が終了した場合、これが「 雇止め 」になるのか、はたまた「 解雇」まで発展していくのか。皆さんはどう思われますか?

更新に対してその都度面接がなされ、最後の契約で ” 更新しない ” で締結された場合、この契約は、会社・従業員同意の上での「 契約期間の満了 」となることは自明の理です。
労働基準法では、労働契約は3年(満60歳以上の者を雇入れる場合には5年)を超えてはならないと規定しています。なので某自動車会社の季節労働者の雇用期間は労働契約法が成立した現在でも2年11カ月での契約期間満了を徹底しています。

問題となるのは、契約締結時に ” 更新する場合がある ” として、会社が有期労働契約の更新に際して労働条件の不利益変更を申し込み、従業員が同意しなかった場合です。この場合、会社は、会社による一方的な雇止めではなく、従業員が労働条件変更に合意せずに期間満了に至ったのだから、解雇法理の類推適用(労働契約法第19条の適用)はないと主張するでしょう。
しかし、裁判所ではこれをしりぞけ、従業員は労働条件変更の申し込みを拒否したにとどまり、雇用継続の期待利益まで放棄したわけではない、なので、雇止め法理の適用はあると判断しています。

となると、労働契約法第19条の規定による雇止めの有効性の判断が重要になってきます。

雇止め法理の対象となる
① 有期労働契約が過去に反復更新され、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できるとみとめられる場合
② 従業員が有期労働契約の契約期間満了時に、契約が更新されると期待することに合理的な理由が認められる場合
に該当するか否かは、
1. 臨時雇用か常用雇用か
2. 更新の回数
3. 雇用の通算期間
4. 契約期間管理の状況
5. 雇用継続の期待を持たせるような会社側の言動
を総合的に考慮して個々の事案ごとに判断されるとしています。

他方、会社は、従業員をストレートに雇止めするのではなく、労働条件変更を申し込んで同意を求め、同意しない従業員を雇止めするのですから、労働条件変更申込みの正当性も問われることになります。
つまり、
1. 従業員の受ける不利益の有無・程度
2. 労働条件変更の必要性(できるだけ文書による客観的な資料等)
3. 会社が提案した補償措置の相当性
4. 労働条件変更の手続き
を総合的に考慮し、労働条件変更申込みの正当性、つまりは労働契約法第19条の ” 更新拒絶の合理的理由・社会的相当性 ” を判断することになります。

結果、雇止めの有効性が認められなかった場合、会社は従前の有期労働契約と同一の労働条件でその申込みを承諾したものとみなされることになります。
それに不服の場合は、労働基準法上の解雇予告手当(平均賃金の30日分)を払い、「 普通解雇の正当性 」について争うケースも出てくるかもしれません。その時の争点が上記の「 労働条件変更申込みの正当性 」を類推適用すれば、
1. 従業員の受ける不利益の有無・程度
2. 解雇の必要性(能力・勤務態度姿勢等客観的文書による資料)
3. 会社が提案した補償措置の相当性
4. 解雇の手続き
を総合的に判断することになるかと思います。しかし、雇止めの有効性が認められなかった時点で、潜脱趣旨丸見えの普通解雇を持ち出しても、その正当性も認められない可能性が高いと思います。無駄な抵抗はしない方がいいかもしれません。解雇は有期契約期間の途中に、従業員側の問題でされるのが一般的だと思います。

 

 

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