労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

106万の壁と今後について

      2024/11/18

年収の壁について最近よくニュースで耳にする機会が多いかと思います。色々な壁が存在し、良くわからないといったご相談も良くいただきます。本日は社会保険の適用対象者と年収106万円の壁についてまとめます。

社会保険加入についての判断基準(以下すべてに該当)

  1. 1週の所定労働時間が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間の4分の3以上である(一般社員が40時間の場合:30時間)
  2. 1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働日数の4分の3以上である(一般社員が21日の場合:16日)

上記に該当しない場合でも、一定規模以上の企業等でお勤めのパート・アルバイト等は以下の基準に該当すると保険加入となります。

従業員(厚生年金保険の被保険者数)が51人以上の企業等(以下すべてに該当)

  1. 週の労働時間が20時間以上
  2. 所定内賃金が月額88,000円以上
  3. 2カ月を超えて働く予定がある
  4. 学生ではない

上記2の要件を年収に換算すると約106万円となるため、106万円の壁と言われています。年収106万円の壁は、パート・アルバイト等が社会保険の加入義務を避けるために年収を調整する問題です。2024年10月からは、51名以上の企業で働くパートタイマーも厚生年金保険と健康保険の加入対象となった変更により、手取り額が減少することを懸念し、就業調整を行うケースが増えると懸念されています。

今後の動向

厚生労働省はこの106万の壁の含めた適用基準の拡大を検討する方針です。これによって、パート・アルバイト等の将来の年金を手厚くする狙いがありますが、中小企業にお勤めのパート・アルバイト等のみならず、企業にも大きな影響があると予想されます。

106万円の壁撤廃

2024年最低賃金の全国平均(1055円)で週20時間以上就労したとして試算すると、月額88,000円を上回りますので、実質的には撤廃されたところで影響は大きくないと考えられます。

企業規模(従業員が51人以上の企業等)要件の撤廃

職場の従業員数にかかわらず厚生年金に加入することで、将来受け取る年金額を手厚くする狙いがあります。対象は約130万人となる見込みです。また、健康保険も同時に加入することとなりますので、以下のような影響が予測されます。

  • 週所定労働時間20時間超の就業者が保険料負担(月額給与の約15%)を避けるために、就業調整をする可能性があります。
  • パート・アルバイト等が多い中小企業では、適用拡大による新たな加入によって保険料負担増が見込まれます。(月額給与の約15%)

個人事業所で働く人の厚生年金加入推進

現在は従業員5人以上の「卸売・小売、金融・保険」など17業種に限り加入義務が生じていますが、これを宿泊業や飲食業にも拡大する方向で調整され、対象人数は約30万人が見込まれます。

まとめ

企業規模要件の撤廃等については、早ければ2025年通常国会で関連法改正案が提出される見込みです。最近は、「103万円の壁」の引き上げが報じられ、減税と就業調整の解消が期待されていますが、社会保険の適用拡大の方針により、新たな負担が生じる可能性がでてきました。特に影響があるのは、国民年金第3号被保険者である専業主婦(主夫)年間収入130万円未満で就業してきた方々です。国民年金と健康保険料の負担が今までありませんでしたが、改正となった際には、社会保険に加入して就業するか、週20時間未満で就業するか選択に迫られる事となり、今後「週20時間の壁」が新たな問題となりそうです。

また、労使折半の保険料負担増が見込まれる中小企業には国からの支援が待たれます。具体的な改正内容、時期、支援策等については引き続き注視していきます。

 -