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高額療養費制度について

   

高額療養費の自己負担額上限の引上げ案について激しく議論がされていますが、先日、石破総理は、今年の8月からの改定については予定どおり実施はする一方で、来年、再来年の段階的な引上げについては、改めて再検討をする方針を示しました。凍結ではなく検討であるので、この案がなくなったわけではなく、不安が残る形となっています。

高額療養費とは、医療費が高額である場合に所得に応じて自己負担分が一定の金額までかからないという制度です。私事ですが、私の母親も昨年心臓の手術をして入院し、退院時の請求書の診療明細書には、実際かかるべき医療費が記載されており、驚くべき金額でありました。これが、高額療養費の自己負担額上限制度のおかげで、支払い金額を少ない金額で抑えることができ、とても手厚い制度だと感じました。

今年の8月から、この自己負担額の上限金額が予定どおり引上げられた場合の引上げ額は次のようになります。(70歳以上と70歳未満で異なりますが、70歳未満の場合についてお伝えします。)

所得に応じて5つの区分に分かれていますが、健康保険の標準報酬月額の区分ごとに現行と改正後の自己負担額の上限金額を比べてみますと(ここでは、細かい計算は省略させていただきます)

1・標準報酬月額83万円以上の場合 現行252,600円→改正後290,400円(37,800円増)     2・標準報酬月額53万円~79万円の場合 現行167,400円→改正後188,400円(21,000増)3・標準報酬月額28万円~50万円の場合 現行80,100円→改正後88,200円(8,100円増)                                     4・標準報酬月額26万円以下の場合 現行57,600円→改正後60,600円(3,000円増)   5・住民税非課税世帯の場合 現行35,400円→改正後36,300円(900円増)

となります。

5つの所得区分のうち、一般的に現役世代の最も多くが該当するのが、③の標準報酬月額が28万円~50万円の方です。今年の8月の段階では8,100円の増額ですが、もし、来年、再来年に引上げがされたのであれば、多い方であれば60,000円近く増えることになっていました。

なお、直近12か月の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降は自己負担限度額が下がるという多数回該当については、長期療養患者の方に配慮して引上げは据え置きとなりました。

今回の法改正の背景には、高齢化や高額な薬剤の普及により、高額療養費の総額が年々増加しており、公的医療機関の負担が増え、結果として現役世代を中心とした保険料が増加していることにあるようですが、高額療養費制度は、長期間の治療を必要としている方にとって、極めて重要な制度であるため、今回の改正が施行された場合、治療の大変さだけでも身体的・精神的に大きな負担であるのに、それに加え経済的な負担が増えてしまうことは大変な影響力があるといえます。

石破総理は、関係者の方々の意見を聞きながら今年の秋までには決定する方針を示しました。どのような決断がされるのか今後の動向に注目していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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