■損害賠償金の賃金控除
2016/02/21
労働者の不注意で会社の器物や車を破損した場合の損害賠償金を、給与より賃金控除することは可能なのでしょうか
労働基準法24条では
1.通貨払いの原則 2.直接払いの原則 3.毎月1回以上 4.1定期日払いの原則 5.全額払いの原則
が定められており、給与より賃金控除することは基本的には 5.の全額払いの原則より反するため認められてはいません。
全額払いの原則の例外として認められるのは以下の2点です。
1.社会保険料や所得税などの法的な控除
2.労働者の過半数で組織する組合または労働者の過半数を代表する者との書面による賃金控除協定で定められたもの 例えば、社宅費 親睦会費 組合費などです。
しかし、労働者のミスや不注意によって会社に損害を与えることはあり得ることです。
ましてや、明らかに会社で定めたルールを無視して労働者が不注意によって起こした損害については 会社が損害賠償金を労働者に請求せざなければならないこともあるでしょう。
判例では、損害賠償金と賃金とを相殺することを認める説と、賃金は労働者にとって生活を支える重要な財源であるため、賃金から相殺することは許されないとする説とが対立しているようです。
最高裁では使用者による一方的な相殺は許されないという見解をとっています。
では、使用者による一方的な相殺ではなく、労働者の同意がある場合はどうなのでしょうか
判例では 使用者が労働者の同意を得て行う相殺については 労働者の完全な自由意思に基づいたものであると認められる合理的理由が客観的に存在することが立証される場合であれば、相殺することは可能となっています。
ただし、同意させるために威圧的な態度にでたり、脅迫まがいな言動をもって同意させることは、絶対許されないので十分注意が必要です。
また、損害賠償金について、賃金控除項目に損害賠償についてを記載している企業もあるかと思いますが 初めから損害額を定めておくことは、労働基準法16条「賠償予定の禁止」で禁止されています。従って、もし損害賠償金を請求するのであれば、損害が生じてから 話し合いにより金額を決めることになります。
いずれにせよ、損害賠償金を労働者だけに負担させるのは公平に反しますので 負担能力 使用者の管理責任 配慮 会社の設備環境などの諸般の事情を考慮して決めるのが妥当といえるでしょう。