■同日得喪と賞与の社会保険料の不思議な関係(金澤)
2016/02/21
まだまだ寒い日が続きますね。でも、雪がほとんど降っていないことを考えると、今年はそんなに寒くないのでしょうか?雪が降っても全く嬉しくなくなってしまった私は、大切な何かを失ったのかしらと、ふと切なくなります。
さて今回は、「同日得喪」と「賞与にかかる社会保険料」についてのお話です。
まず最初に申し上げますが、「定年(に限りませんが)退職日が、必ず月末になる会社さんは関係のないお話」です。つまり、同日得喪日が1日になる場合は、今回のお話に当てはまらないということです。
これからお話するのは、同日得喪日が1日以外の日になる場合のお話です。結論から先に申し上げますと、この場合、「同日得喪月の初日から同日得喪日前日までに支払った賞与」には、社会保険料がかかりません。
分かりにくいので、例を挙げてご説明しますが、その前に以下の2点のポイントを前提としてお読みください。
1)同日得喪日より前と、同日得喪日以後では、社会保険料の計算上は「別人」と認識されること。
(例えば、同日得喪前は「田中さん1」同日得喪日以後は「田中さん2」というイメージです。実際に健康保険証の番号も変わるので、イメージしやすいかと思います。)
2)社会保険料の基本ルールとして、「喪失日の属する月の前月分までの社会保険料が徴収される」こと。
(つまり、喪失日の属する月に支払われた給与・賞与には社会保険料はかかりません)
では、例を挙げてご説明します。
事例)「12月20日退職、12月21日同日得喪」の場合
この場合は、11月に支払った賞与には社会保険料がかかり、12月1日から12月20日までの間に支払った賞与には社会保険料がかからず、12月21日以降に支払った賞与には社会保険料がかかります。
順番にご説明しますと、まず11月中に支払う賞与は、同日得喪をする前の「田中さん1(仮名)」に支払われたものと認識され、最初にご確認いただいたポイント1のとおり、当然に社会保険料がかかります。
次に、12月1日から20日までの間に支払った賞与も、同日得喪前の「田中さん1」に支払われたものと認識されます。よって、12月21日に喪失している「田中さん1」は、11月分までの社会保険料しかかかりませんから、12月に支払われた賞与には社会保険料はかかりません。
ではなぜ、12月21日以降に支払われた賞与には社会保険料がかかるかと申しますと、支払日が同日得喪日以後であることから、「田中さん1」ではなく、全く別人の「田中さん2」に支払われたものと認識されてしまうためです。(上記ポイント1より)「田中さん2」は12月1日に取得していることから、12月分から社会保険料がかかります。
いかがでしょうか?文章だけで分かりにくい場合は、図示してみると良いと思います。そうすると、最初に申し上げました「同日得喪日が1日になる場合は当てはまらない」の意味もお分かりになると思いますよ。
その人は継続して勤務しているのに、(形式上、一回退職したような形をとっているけれども)同日得喪日と賞与支払日がたまたま条件に当てはまった場合だけ、社会保険料がかからない場合があるというのは不思議ですよね。でも、実際そのようになりますので、実務上、ご注意くださいね。