■使用人兼務役員の雇用保険の適用について
2016/02/21
使用人兼務役員とは、会社の役員であって、同時に支店長や工場長など従業員としての身分も有している者のことをいいますが、このような場合の雇用保険の適用はどうなるのでしょうか
原則として、法人の取締役・理事等は被保険者には含まれませんが、支店長や工場長など従業員としての身分も有していて、労働者としての性格が強い場合は、雇用保険の被保険者になることができます。
労働者性があるかどうかの判断は法律等で明確な記述があるわけではないのですが、職業安定所で定められている基準に基づき下記のような判断基準によって判断されます。
1・使用人兼務取締役の労働者性の判断基準
(1) 拘束性の有無
役員であれば勤怠管理は不要です。取締役に就任後も勤務場所や勤務時間等の拘束を受け、勤怠管理されるなど、業務遂行において拘束性が認められる場合には、使用者の指揮命令を受けている労働者と判断されます。 勤怠管理の証明は出勤簿等で証明することになります。
また、労働者には就業規則が適用されますが、兼務役員が他の労働者と同じように就業規則の適用範囲に含まれているか否かについても確認されます。
(2) 役員報酬と賃金の支給の割合
使用人兼務役員には、通常、役員報酬と賃金の両方が支給されます。両者を比較した場合 賃金の割合が大きい場合は、労働者としての役割が大きいと判断されます。
実際に雇用保険の適用を受ける場合には、取締役会議事録や役員報酬規程や賃金台帳を基に賃金が役員報酬を上回っていることを証明することになります
しかし、上記のような労働者性を有していたとしても、業務執行権を有している場合は雇用保険における使用人兼務役員には認められないので注意が必要です。
2・職安への届け出と保険料について
事業主は管轄の職業安定所へ「兼務役員等の雇用実態証明書」を届ける必要があります。その際、定款、議事録、組織図、就業規則、賃金台帳等の写しの添付が必要です。
これらの書類を基に職業安定所が届け出された労働者が労働者性を有する雇用保険上の兼務役員かを判断します。そして労働者性が認められれば雇用保険法における兼務役員となります。
また、保険料の算定においても 役員報酬と賃金の両方が支給されている場合は、賃金部分に対してのみ 雇用保険料率をかけて計算しなければいけませんので注意が必要です。