■通勤災害の要件
2016/02/21
2020年東京オリンピックの開催が決まりました。
7年後なので、まだまだ実感はありませんが、このチャンスを生かした、これからの日本の発展、成長に期待したいと思います。
さて、今回は通勤災害についてです。
通勤災害とは、労働者が通勤により被った災害のことですが、
この場合の「通勤」の定義とは、「労働者が就業に関し、次に揚げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を除くもの」と規定されています。
通勤に該当する移動とは
・住居と就業との間の往復
・就業の場所から他の就業場所への移動(複数の事業場間の移動)
・往復に先行し、または、後続する住居間の移動(単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居間の移動)のことです。
ただし、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。
しかしながら、通勤災害には一定の要件が必要であり、同じような行為にみえても、通勤災害が認められる場合と認められる場合があります。
以下、いくつかの事例をあげてみました。
★移動中であっても通勤災害ではなく業務災害となる場合の事例
1)事業主が専用のバスなどを用意して労働者の通勤に使用している場合
2)休日等に、会社からの特別な命令によって呼び出されて出社する場合
3)出張のための出発 帰着の移動の場合
これらは、事業主の管理下に置かれていることとなり、業務の性質を有するものであるため、通勤災害ではなく業務災害となります。
★移動の経路が逸脱または中断になるかならないかの判断による事例
1)飲み物の購入・クリーニング店に寄る・短時間公園で休憩→ささいな行為であるため逸脱・中断にならない→通勤災害となる。
2)居酒屋・映画館に行く・人と長時間公園などで話し込む→ささいな行為とならないため逸脱・中断に該当→通勤災害とならない。
3)単身者が通勤途上で食事をとるために飲食店に立ち寄る→単身者であれば一般的な行為のため逸脱・中断にならない→通勤災害となる。
4)既婚者が家に帰れば食事はあるのだが、外食するため飲食店に立ち寄った場合→逸脱・中断になる→通勤災害とならない。
ただし、単身者であっても 合理的経路から大きく外れた場所で食事をした場合は認められませんし、既婚者でも配偶者がその日はいないなど合理的な理由があると認められれば通勤災害と認められることもあります。
★就業との関連性があるかないかでの判断の事例
1)昼休みに家に昼食を食べに帰宅する途中の災害→通勤は一日一回しか認められないものではなく、午前中の業務を終え自宅へ帰り、再び午後の業務につくために就業場所へ向かった行為は就業との関連性があり、通勤災害となる。
2)昼休みに個人的な用事をするために、家に帰り、その用事を済ませた後、再び自宅から就業場所へもどろうとしたとき被災した場合→自宅と就業場所の往復をする行為は私的事情に基づくもので就業との関連性が認められないため通勤災害とはならない。
保険給付については 療養給付 休業給付 障害給付 遺族給付 葬祭給付 傷病年金 介護給付があり、支給に関しては ほとんど業務災害と差はありませんが、業務災害の場合、事業主の義務として、被災した労働者が休業を開始した日からの待期期間の3日間に休業補償の60%を払う義務がありますが、通勤災害の場合はその義務はありません。通勤災害は業務上の災害ではないため、使用者の災害補償責任には及ばず 労働基準法の使用者の義務である休業補償は必要ないからです。
通勤災害は、業務災害に比べて、その認定には厳しい要件が課されています。要件が満たされていれば通勤災害と認められますが、以上の事例のように少しの違いで認められるない場合もありますので、注意が必要です。なるべく不要な寄り道はせずに帰るのがいいですね。