■中小事業主の特別加入制度
2016/02/21
中小事業主の特別加入者制度
労災保険は、本来、労働者の業務中または通勤中による災害に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外の方のうち、その業務の実情・災害の発生状況などから見て労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の者に対して、特別に任意加入を認めているのが、労災特別加入制度です。 しかし、特別加入者の行う全ての業務について労災が認められるわけではありませんので注意が必要です。
①特別加入を行うことができる中小事業主等の範囲
中小事業主等の特別加入として、「中小事業主」及び「中小事業主が行う事業に従事する者(労働者は除く)」が加入することができます。
1・「中小事業主」とは、常時300人(金融業、保険業、不動産業、小売業の場合は50人、
卸売業・サービス業の場合は100人)以下の労働者を使用する事業の事業主をいいます。
2・「中小事業主が行う事業に従事する者」とは、労働者以外の者で当該事業に従事する者をいいます。すなわち、特別加入を行うことのできる事業主の家族従事者や中小事業主が法人 その他の団体である場合における代表者以外の役員などが対象となります。
②特別加入の要件
1・中小事業主等が特別加入に加入するためには、次の要件を備えていることが必要です。
イ 中小事業主等が行う事業について労災保険に係る保険関係が成立していること。
ロ その事業に係る労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託していること。
2・一定の有害業務に従事している場合、加入時に健康診断が必要です。
③保障の対象となる範囲
1・所定労働時間内 (加入時の申請書「特別加入申請書」に記載された所定労働時間)において、申請時の業務内容をしていた行為を行っていた場合、労働者を伴っていたか否かにかかわりなく、業務遂行性を認めています
注意として、株主総会、役員会、得意先等の接待等などの行為中は労働者が行う業務に準じた業務ではないので、認められません。
2・労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合、当該事業場の労働者が時間外労働又は休日労働を行っている時間の範囲において業務遂行性が認められます。
3・上記1又は2に前後して行われる業務(例えば 準備 後始末行為など)を特別加入者のみ行う場合
4・上記1、2及び3の就業時間内における事業場施設の利用中及び事業施設内での行動中の場合
5・当該事業の運営に直接必要な業務のために出張する場合
(ただし、出張中の恣意的な行為、積極的な私的行為等については、認められません。)
6・通勤途上であって次に掲げる場合
イ 事業主提供に係る労働者の通勤専用交通機関の利用中
ロ 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出 勤途上
7・当該事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合
通勤災害については、一般労働者の場合と同様に取り扱われます。
以上のように、特別加入者の場合は、加入条件や被災した場合の補償は、予め特約した内容で行われます。
特別加入者の被った災害が業務災害として保護される場合の業務範囲はあくまでも労働者の行う業務に準じた業務の範囲であり、特別加入者の行うすべての業務に対して保護を与える趣旨のものではありません。条件等について予め十分確認しておくことが大切です。