■組織にコミュニケーションを築く
組織にコミュニケーションを築くためには、どうすればいいか。アドラーはまずはこんなアドバイスをしてくれています。
「相手に好かれたい」「喜ばせたい」という気持ちが強すぎて、自分を犠牲にしていませんか。無理して自分自身が苦しくなっていませんか。人は人、自分は自分です。本当の意味で気持ちのよい人間関係を築くために、自分の本音の気持ちを大切にすることからはじめてみませんか。
人間関係は、3段階で深まっていくとアドラーは言っています。
1.「かかわり」のレベル=知人(仕事の関係)
お客様のような、義務感をともなって交流する関係で、ある役割が終わると関係が消滅する。
2.「つながり」のレベル=友人(交友の関係)
お酒の付き合いがあったり、趣味の付き合いがあったりして、本音が出て感情的なやりとりも頻繁になる。ときには、けんかに発展することもある。
3.「結びつき」のレベル=知己(運命共同体)
打算や役割を超えた交流があり、その人がいなかったなら人生が大きく変わってしまうような人間関係。
次に「よい人間関係を築くための6つの姿勢」を教えてくれています。
それは、
- 尊敬 人にはそれぞれに年齢・性別・職業・役割・趣味などの違いがあっても、人間の尊厳には違いがないことを受け容れ、礼節をもって接すること。
- 信頼 常に相手の行動の背後にある善意を見つけようとすること。根拠を求めずに無条件に信じること。
- 協力 目標に向けて仲間と合意できたら、ともに問題解決の努力をすること。
- 共感 相手の置かれている状況、考え方、意図、感情などに関心をもつこと。
- 平等 各人の違いを受け入れつつ、対等の存在と認め、各人の最大限の自由を許容すること。
- 寛容 他者を自分の価値観ではかったり押しつけたりせず、意見を意見として受け止め、批判・非難とみなさないこと。
コミュニケーションを築く三大手法は「観察」と「傾聴」と「共感」だとアドラーは示唆します。
1)観察とは
言語的な要素
ハキハキ話をしているのか、元気がなさそうに話をしているのか
聞かれたくない話をしているのか、自信がなくなったのか
嘘をついているのか、焦っているのか
非言語的な要素
腕組みをしているのか、身を乗り出して聞いているのか
乗り気だったが退屈しはじめたのか
緊張していたが積極的な気持ちに変わったのか
2)傾聴とは
単なる聞くだけではなく、「相手の関心事に関心を持つ」の聴くであり、「相手に関心を持つ」の訊くことではない。
質問を「上から目線」ではなく、対等な立場で行う。
回答に対して、積極的に感情を言葉で表現する。「教えてくれてありがとう」の感謝の気持ちを表現する。
きっかけ、理由、背景を聴く。相手が「そのこと」について関心を持っている理由を聴く。
3)共感とは
「相手の立場に立つ」、自分の価値観だけで「相手のことを考える」のではなく、相手の感情を想像して、相手の感情を疑似体験する。
そのためには、名作といわれる映画や小説を観て、読んで、各々の登場人物の気持ちになってみるのがよいトレーニングの方法です。
人間関係でトラブルが生じた時の4つの対処方法
どんな人でも2:6:2の割合で、好きな人、普通の人、嫌いな人が存在するといわれています。そこで、人間関係で苦しいなと思ったときの対処法をアドラーは教えてくれています。
1.生きていく上で本質的・不可欠な問題か、人生にとってどうでもよい、とるに足らない問題かに分けてとらえる。
→実害を及ばす本質的な問題だけに注力する。
2.事実と意見を分けてとらえる。
→意見は意見として冷静に聞き、事実だけに目を向けて対処する。
3.「最悪の事態はまずない」と開き直る。
→厳しい事態に直面したとしても、それで命までとられることはないと腹を据える。
4.怒りの感情をコントロールする。
→心理的、物理的に距離を置いて、冷静に対応する。
人間関係でうまくいくコツは、人と適切な距離をとりながら自分と仲良くする
人間関係において、アドラー心理学の非常に重要な考え方に「課題の分離」というものがあります。これは、相手との関係において、相手の課題なのか、自分の課題なのかを明確にし、踏み込まない、踏み込ませないことをいいます。
「私がなんとか解決してあげなければ!」
「そんなことしたらダメでしょ」
「あの人のせいで私はこんなことになったんだ」
相手と自分の境界線を越えてしまうと、人間関係にトラブルが生じてきます。
では、どんな対応が必要なのか。
人と適切な距離をとること
つまり、
①ありのままの自分を受け入れる
②出来ない自分を受け入れる
③欠点だらけの自分を受け入れる
④どんな状況になっても自分を受け入れる
⑤自分にできることと自分にはできないことを見極める
自分自身と親友のように付き合うことによって自分が自分の心の支えになります。
アドラーは「大切なことは何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかである」という言葉を残してくれています。
「与えられたものはすでにたくさんある」、たくさんの「今あるもの」を人間関係にどう使うか、自分自身を認め、応援する必要があります。