社会保障協定・厚生年金特例加入について
2016/11/09
近年、企業から派遣されて海外で働くことや、将来を海外で生活される方が年々増加しています。海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度に加入をする必要があり、日本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が生じています。また、日本や海外の年金を受けとるためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があるため、保険料の掛け捨てになってしまうことがあります。
●目的
社会保障協定は、社会保障制度の保険料の二重負担や保険料の掛け捨てを防ぐため、また協定を結んでいる国の年金制度を相手国の年金加入期間に通算することで、その国の年金を受給できるようにするために締結しています。
●協定が発行済みの国(2016年10月現在)
ドイツ イギリス 韓国 アメリカ ベルギー フランス カナダ オーストラリア オランダ チェコ スペイン アイルランド ブラジル スイス ハンガリー インド 計16か国(注)イギリス、韓国及びイタリアについては、「保険料の二重負担防止」のみです。
今回は、米国へ一時的に派遣される場合にどのような手続きをする必要があるか考えてみます。
●適用免除の取り扱い
一時派遣とは、米国への派遣期間が当初から5年以内と見込まれていることを言います。
この場合には、日本での社会保険にそのまま加入し、派遣期間中の米国での社会保険保障制度は加入免除となります。
国外居住者の場合には介護保険の適用は除外されますので、介護保険適用除外等該当・非該当届申請の手続きする必要があります。
●手続き
「日米社会保障協定 厚生年金 健康保険 適用証明書交付申請書」を年金事務所に提出します。適用証明書が申請者に交付されますので、米国の派遣先事務所等に提示・提出します。
●当初から、米国への派遣期間が5年を超えるとみこまれる長期派遣者
米国での社会保障制度に加入する必要があります。日本の社会保障制度は加入免除となるため、喪失手続きが必要となります。
●厚生年金特例加入制度
5年を超えて米国へ派遣される場合に、日本の社会保険を喪失する必要がありますが、米国の年金制度に加入するとともに、日本の厚生年金保険制度にも任意で加入できます。米国の社会保険加入期間中は、将来の日本の年金加入期間に通算しますが、将来日本で受け取る年金額には反映されません。したがって、「日本での年金額を減らしたくない」、「障害になってしまったときの保障も受けたい」という場合に加入することが想定されます。
●手続き
「厚生年金保険特例加入被保険者資格取得申出書」を年金事務所に提出します。保険料納付義務に関する米国の法令が適用された日に日本の社会保険を喪失し、同日に特例加入をします。(届出は喪失日から1カ月以内)
被扶養配偶者がいる場合は国民年金第三号の届け出も忘れずに行います。
●注意点
米国への派遣期間が5年を超えると見込まれていた長期派遣者については、派遣期間が結果として5年を超えなかったとしても一時派遣者として取り扱われることはなく、原則として米国の制度への加入は免除されません(日本の社会保障制度への加入は免除)。一方、当初より5年以内の派遣見込みであれば、当初の予定を延長して、引き続き米国の社会保障制度の加入の免除を受けようとするときは、「適用証明期間継続・延長申請書」にて延長の申請することが可能です。
日本の企業から米国に派遣される場合、米国の社会保障制度の免除を受けるためには、米国に派遣される直前に、原則として6ヶ月以上継続して日本で就労、または居住し、日本の社会保険制度に加入していることが条件として追加されます。