健康保険から労災保険への切り替え手続きと一部変更点
業務中に怪我をした場合、原則、労災保険の適用になるのですが、労災かよくわからない場合にとりあえず健康保険を使ってしまったということは時折耳にする話です。このような場合、労災保険への切り替え手続きをすることにより支払った治療費が戻ってきます。しかし、病院側がすでに健康保険として協会けんぽ等の保険者に請求してしまっている場合は、被災者本人が窓口で支払った3割分の他に残りの7割分を立て替えて保険者に支払わなければならないというリスクがあります。高額の場合は被災者にとってかなりの負担になることでしょう。
そんな中、今年の2月からの変更点として、自己負担額が高額で医療費の全額を支払うことが困難な場合に、被災者を介してではなく保険者と労働基準監督者が直接やり取りができるようになる制度ができました。
今回は、健康保険から労災保険への切り替えの手続きについての流れと2月からの変更点についてお伝えします。
《健康保険から労災保険への原則の切り替え方》
まずは受診した病院に労災保険への切り替えが可能か確認します。
1・ 医療機関の締めが過ぎていなければ、窓口に支払った金額の領収書を持っていけば返金されます。同時に労災保険の請求書様式第5号(業務災害の場合)または様式第16号の3(通勤災害の場合)を受診した病院に提出します。
2・医療機関の締めが過ぎており切り替えができない場合は、一時的に医療費の全額を自己負担する必要あります。具体的には、保険者へ労災保険の適用であったことを申し出ると、保険者から医療費返納の通知と納付書が届きます。かかった医療費の全額から、既に医療機関で支払った自己負担額(3割)を除いた7割の医療費を金融機関で返納金として支払います。その後、労災保険の様式第7号(業務上の災害の場合)または様式第6号の5(通勤災害の場合)を記入し、返納金の領収書と自己負担で払った領収書、レセプトの写しを添えて、労働基準監督署で手続きを行います。労災と認められれば、支払った額が返金されます。
《2017年2月からの一部変更点》
今年の2月から、健康保険から労災保険への切り替えをするにあたって、返還額が高額で、医療費の全額を自己負担することが困難な場合、被災労働者の申し出により保険者の同意が得られれば、相当する額を労災保険から直接振り込むことによって、保険者への返還手続きを行うことが可能になりました。これは、今まで被災労働者が一旦保険者へ返していた7割分を 労働基準監督署から直接保険者へ返金してもらうことができるようになったのです。手続きは、保険者への同意書及び労働基準監督署への委任状等、必要な書類はありますが、被災労働者側にとっては、立て替えのリスクが軽減され、安心感が違うと思います。また、この場合、3割の自己負担分については別途、療養費用の請求として請求しなければなりませんので忘れずに請求する必要があります。
労災保険を使うべきところを健康保険を使ってしまったということはよくあることなのですが、後で切り替えることによって余分な手続きの手間と時間がかかってしまいますので、会社側としては日頃から労働者に対して労災と健保の違いを説明し、もし業務中に怪我をしてしまった場合には、速やかに会社に報告をしてもらい、労災保険を使うように指示・指導するのが望ましいと思います。