労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

理想どおりの働き方ができていますか。

      2017/05/26

新年度も二ヶ月が過ぎ、通勤途中にフレッシュマン&ウーマンを不思議と見かけなくなりました。人の順応力の高さには驚きです。社会人としての日々にもう慣れてしまったのでしょうか。それともリクルートスーツではなくなったせいなのでしょうか。

さて今回は『短時間労働者に対する社会保険の適用拡大』に関連して、労働者にとってのメリット・デメリットといった目線で考えてみたいと思います。私も一員であるので、女性寄りの見方であることはご容赦ください。

被保険者が常時501人以上の企業にお勤めの方は、既に夫の扶養をはずれ、ご自身で社会保険に加入された方も多いと思います。国が決めたことだから仕方がないと、半ば諦めに近い思いで手続きにサインをしたという方も多いようです。

では、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入するとどんなメリットがあるのでしょうか。

一つは単純に、厚生年金保険に加入することで、将来受け取る年金が、これまで国民年金のみだったところを、二階建て部分の厚生年金も加算され、増額になります。もちろん加入期間の要件を満たせばという大前提がありますが。しかしながら、子育て世代は30代~40代が多いと思いますので、そんな先のことを言われてもメリットといえるのかはわかりません。

では、他にはどんなものがあるのでしょうか。

仕事以外でのケガや病気により、医師から労務不能と言われ会社を休まなければならない場合、給与が支払われずたちまち生活に支障をきたすなんてことは、誰にでも起こりうる事態です。婦人科系の病気のリスクが高まるのもこの30代~40代と言われています。でも、ご自身が健康保険の被保険者である場合、申請することで「傷病手当金」が支給されます。これは被扶養者(夫の扶養)では受けられないものです。

「傷病手当金」は、協会けんぽや健康保険組合により申請方法は多少違いますが、医師から労務不能であることの証明を受けた期間に欠勤した時の所得補償として支給されるものです。

最初の3日間は待機期間と呼ばれ「傷病手当金」は支給されません。この待機期間は、公休・有休を含めた暦日の連続した3日であることが必要で、途中で出勤し、給与が支払われるとカウントがはじめからになります。

支給額は日額で計算され、4日目から、休んでいてかつ給与が支払われていない日数分を支給されます。

《計算式》

「傷病手当金」の1日当りの金額

=支給開始日以前の連続した12ヵ月の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

既に社会保険に加入されている方は、ご自身の給与明細で控除されている「健康保険」の額を、会社が加入している協会けんぽまたは健康保険組合の保険料率額表で確認することで、ご自身の「標準報酬月額」を確認することができます。

例えば、標準報酬月額の平均が「200,000円」で、待機期間を除いた28日間が労務不能の場合

200,000円÷30日×2/3=4,444.44… → 4,444円

※小数点第1位を四捨五入

4,444円×28日≒124,432円

が「傷病手当金」として支給されます。

また、社会保険に加入して1年未満の場合は、上記とは違う計算方法で1日あたりの金額が決まります。

「傷病手当金」以外では、女性であれば「出産手当金」の支給申請も可能ですが、今回は説明を省略します。

前述のとおり万が一の病気やケガの場合の安心感はありますが、毎月の手取り額が減ることは避けられない事実です。社会保険は、労使折半での支払いのため、労働者負担分は半分の保険料で済みます。こちらは、労働者にとってデメリットでもあり、メリットでもある点と考えます。

社会保険に加入するメリット・デメリットを考えた場合、労働者全員を一概に当てはめて考えることはできません。今手元に残るお金を増やしたいのか、将来手元に残るお金を増やしたいのかは、皆さんそれぞれで考え方が違うからです。

毎月の給与の支給額と控除される保険料額を考えた上で、ご自身がどういった働き方をしたいのかは、家計を知る本人にしか分からないことではないでしょうか。本当の意味でのワークライフバランスとは、自身のライフスタイルにあった働き方を、労働者が理解して選択することから始まると考えます。

社会保険の適用拡大に伴い、今一度、ご自身の望む働き方を考え直してみませんか。仕事は楽しいものです。何かを犠牲にして働くのではなく、どれもバランスよく人生を送れた方が、さまざまな場面で有意義であることに間違いありません。

 -