解雇の金銭解決制度について
「解雇の金銭解決制度」を厚生労働省が概要を提示して、有識者により検討されています。
労働者にとっても解雇は自身の生活がかかっているため、受け入れられない場合は裁判により争うケースも少なくありません。
しかし裁判により労働者が解雇無効を勝ち取った場合において、会社と信頼関係を失った状態で職場に戻ることが労使の今後のために良いことであるとは限りません。
そこで、解雇が無効とされる様なケースにおいて、要件を設けた上で一定の金銭を支払うことで労働契約を終了させることがこの「解雇の金銭解決制度」の概要です。
実はこの制度は平成15年頃から随時検討されてきましたが、慎重さが求められることから制度化に至っておりません。多様な労働裁判が増える中、一定の解決ルールを再度模索するのでしょう。
概要案4つ
1・解雇が無効であるとする判決を要件とする金銭救済
2・解雇を不法行為とする損害賠償請求の裁判例を踏まえた金銭救済
3・実態法に労働者が金銭の支払を請求できる権利を創設する仕組み
4・使用者からの申し立てによる金銭救済の仕組み
現状においても金銭解決は適宜行われています。それを制度として,明確にすることは労使にとって悪いことではないと考えます。
■メリット
・労働者にとって、解決金に結局応じてもらえず泣き寝入りしていたケースが減少。
・使用者にとって、労働契約の終了に向け明確な制度であるため解決金の支払後は紛争を蒸し返えされる心配がない。
・会社側も労働者側も見通しが立てやすくなり、早期解決につながることが期待できる。
■デメリット
・労使関係の修復が前提にない制度である。(逆に言えば修復できない場合の制度)
・要件を設けることで決して簡単なものにはならないと予想されるが、金銭を払えば自由に解雇できるといった間違った風潮が広がりやすい。
会社の解雇が正当なものでないことがこの制度の前提であることから、やはり労働者から申し立てがあった場合または労働者が合意した場合というのは要件になってくる可能性が高いでしょう。解雇が相当でないが、労働者の軽くない落ち度も認められる様なケースにおいては、金銭解決を会社から言い渡すことができるような制度だと双方に平等な気もしますが、日本においては難しいかもしれませんね。まだまだ不透明な先行きです。