労働時間管理とコミュニケーションについて
もうすぐ春がやってくるはずなのに、あらゆる風邪の症状の人もまだまだ多いですね。我が子が通う学校での学級閉鎖の多さといい、お客様からの「インフルエンザ」についてのお問合せといい、今シーズンは、身近でもインフルエンザが大流行している様子がうかがえます。
インフルエンザで医師が労務不能と診断した場合、休業手当(労基法第26条)の必要はありませんが、従業員の家族の発症により、あくまでも蔓延予防のために会社側が出社を拒む場合は、休業手当は必要となります。
なかなか長期に渡りインフルエンザで労務不能と診断されることも少ないとは思いますが、連続して3日の待期期間を超えての休みが続くようであれば、社会保険に加入されている方は、傷病手当金の申請も可能です。
さて今回は、「労働時間」について改めて考えてみたいと思います。長時間労働による過労死や健康管理、未払い賃金の発生等で、労働基準監督署の調査も強化されるようですし、「働き方改革」としても何かと話題にあがっているため、働く皆さんの関心も高くなりつつあるのではないでしょうか。
2017年1月に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、2001年4月の基準を拡充したものですが、新たに「労働時間の考え方」が明記されています。
www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
このガイドラインにも記載がありますが、労働時間についての判例では「三菱重工長崎造船所事件」の最高裁判決が有名です。18年前の判例のため最近ではかなり浸透していますが、業務に必要な準備行為(義務付けられた社内での着替え等)や手待時間(積荷待ち等)、業務上義務付けられている研修・勉強会等の受講の時間は、すべて労働時間に該当します。
労働時間は「常識と法律が相当に食い違う分野」と表現される人もいるほどで、いわゆる“ダラダラ残業”も法律的には労働時間とされることがあります。
労働時間の記録は、タイムカードで行っている企業が多いと思います。従業員数が多いところではICカードを導入されているところもあるでしょう。当社は、従業員数も少ないからこそ続いていることですが、アナログ方式で、手書きでの記録をしています。自己の労働時間に目を向ける意味でも、アナログ方式は意外といいと私は思っています(集計担当じゃないので言えることかも?)。
入社時に総務担当からタイムカード等の使い方を伝え、問題なさそうならば、後は本人の記録に任せ、打刻時間から労働時間を算出して給与計算を行うのが、一般的な流れのように思われがちです。
しかしながら、上記のガイドラインにも記載があるように“使用者は「自ら現認する」こと”を求められています。つまり、使用者(経営者と一体的な立場にある管理監督者含)は、労働者の労働日ごとの労働時間を確認しなければなりません。これは2001年4月の基準から変わっていない記載事項です。
業務の性質上、タイムカード等での記録ができず、自己申告制により記録を行う場合もあるため、その場合の措置についても、ガイドラインには示されていますが、この部分は、2001年4月の基準よりも細かく記載されています。
いずれにしても、労働者の記録に任せるのではなく、必要に応じて実態調査を実施し、適正な記録(自己申告)が行われているかを確認し、必要があれば補正することが求められています。
長時間労働が続いている従業員がいることは、もちろん把握すべきことですが、ただ把握するだけではなく、必要な労働時間(仕事)なのかどうかを検証し、効率化を図るなど、業務軽減措置を講ずることも重要なことです。
ただ単に「早く帰れ」と言うのではなく、なぜ時間外労働が必要なのか、何が問題なのか等、各従業員に関わっていく必要があると言うことです。最近は“飲みニケーション”も衰退し、口頭ではなくチャットやメールでのやり取りが多くなり、人とあまり関わらずとも仕事が進められるようになってきましたが、労働時間管理を考える面では、人と人との関わりは避けられないものだと感じさせられます。
これから益々労働時間管理が厳しくなる中、社内コミュニケーションの大切さは当社でもしみじみ感じているところです。代表の國井が年明けの「情報コラム」で発信しております「交換ノートと全体会」がそうですが、毎日の夕礼のスタイルも同様にしたことで、昨年までよりとまた違った雰囲気が社内に流れつつあるように感じています。
まだまだ始まったばかりですので、感じた成果はいずれまたご報告できればと思います。