出向契約の留意点について
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしょうか?弊社は労働保険の年度更新の真最中であり、なかなか休み気分になれないのが現状ですが、休めるときにはしっかり休んでリフレッシュしたいものですね。
さて、今回は出向契約についてのお話です。最近では、派遣契約・出向契約・請負契約・委任契約など多種多様な働き方の形態が多くなっておりますが、労働法の規制は年々厳しくなっており、間違った扱いをすれば違法行為となってしまうこともありますので、それぞれの労働形態に適した扱いをすることが重要となります。
出向契約には在籍型出向と移籍型出向の2種類があり、在籍型出向とは、元の会社との労働契約を継続させたまま他の会社に出向し労務の提供をするというものです。この場合、出向先企業においても労働契約を結ぶこととなるので、二重の雇用契約が成立することになります。それに対して、移籍型出向とは、元の会社との労働契約を終了させ他の企業と新たに労働契約を結ぶことをいいます。このように在籍型出向と移籍型出向とは扱いが異なりますので、注意が必要です。
1・在籍型出向と移籍型出向の保険関係等の取扱い
(1)在籍型出向の場合
労災保険・・・実際に働いている出向先で適用されます(労働保険料の算定は両方から給与がでていれば合算する)
雇用保険・・・主たる賃金を支払っている側のものを適用されます
健康保険、厚生年金保険・・・直接給与を支払う側で適用されます(両方から給与が出ていれば2以上勤務扱いとなり保険料は按分される)
就業規則・・・あらかじめ、出向先と出向元との契約により決定されます。一般的には、身分にかかわる事項(退職・解雇・懲戒など)は出向元の就業規則が適用され、勤務に関わる事項(労働時間・休憩・休日など)は出向先の就業規則が適用されます。
年次有給休暇・・・継続勤務とみなされ、出向元で付与された年次有給休暇を出向者は出向先で請求することができます。
(2)移籍型出向の場合
すべて出向先での適用となります。
2・在籍型出向が労働者供給事業となるか否かの線引き
在籍型出向で気をつけなければいけないのは、労働者供給事業になるか否かの問題です。労働者供給事業とは、職業安定法第44条により禁止される事業であり、在籍型出向の形態自体は、実は外見上で見ると労働者供給に該当してしまうのです。ただし、在籍型出向が「業として行われる」場合においてのみ、労働者供給事業に該当します。この「業として行われる」?というのは、何だかわかりにくい表現ですが、ビジネス的なものとして反復継続的に遂行することを指すものと考えられます。したがって、反対解釈として考えると、違法にならないためには、出向が次のように「業として行われない」ことが条件となります。
(1)不況等により労働者を離職させないために、関係会社において雇用機会を確保する
(2)経営指導、技術指導の実施
(3)職業能力開発の一環として行う
(4)企業グループ内の人事交流の一環として行う
以上のような目的を有しているものについては、出向が行為として形式的に繰り返し行われたとしても「業として行われている」可能性が低いと考えられます。在籍型出向形態を運用する場合には、拡大しすぎてしまうと、労働者供給事業に該当し違法形態になる可能性が出てくるため、グレーゾーンにあてはまらないかを注意する必要があるでしょう。