使用者の安全配慮義務
私は労務管理において最も重要視をする1つに使用者の安全配慮義務を挙げます。なぜならば怠った場合のリスクが会社にとって大きいためです。
平成20年3月に施行された労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と、使用者の労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)を明文化しています。労働契約法には今のところ罰則がありませんが、安全配慮義務を怠った場合、民法第709条(不法行為責任)、民法第715条(使用者責任)、民法第415条(債務不履行)等を根拠に、使用者に多額の損害賠償を命じる判例が多数存在します。
安全配慮と言ってもその言葉の示すものは範囲が広く漠然としていますが、発生し得る危険をできるだけ想定していくことが重要です。よって出来るだけ文言により整理しておくことが望ましいと考えます。考え得る安全配慮を列挙いたします。安全配慮は会社の業務内容や規模にもよりますが、対応できる安全配慮をこれらにさらに加えていただけたらと思います。
1. 健康診断等の実施。必要に応じて就業場所、業務内容の変更、労働時間の短縮等の措置を取る。従業員への声掛け。
2.機械設備等の安全点検や安全装置の取り付け。
3.安全衛生教育の実施。従業員に機械や原材料の危険性・有害性及び取り扱い方法を教育する。
4.安全衛生管理体制の確立 職場の規模等に応じて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業医等を配置。
5.適切な労働時間の管理。 長時間労働(過重労働)にならないよう、従業員の労働時間を管理する。
6.快適な職場環境の形成。ハラスメント禁止の意思表明、 危険箇所の注意喚起、事務所、作業所、トイレ、休憩所、食堂などを適切に設置。
転ばぬ先の杖、不備に心当たりがある場合には大きな労災が発生する前に安全配慮と対策をしていただくことをお願いいたします。