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非正規格差最高裁判決

   

正社員と非正社員の待遇の違いが労働契約法第20条(同一労働同一賃金)に抵触するか否かの判決が6月1日に最高裁第2小法廷で出ました。

「長沢運輸」を巡る訴訟では、定年退職後に再雇用された嘱託社員3人が「定年前と同じ仕事をしているのに年収が約500万から約350万に減らされたのは不当」と訴えていました。

結果、定年後再雇用で仕事の内容が変わらなくても、給与や手当の一部、賞与を支給しないのは労働契約法第20条には抵触しない。ただ、休日を除く全ての日に出勤した者に支払われる「精勤手当」5千円を嘱託社員に支給しないのは違法と判断。時間外手当に関する手当については、金額などを改めて検討するため、東京高裁に審理を差し戻し。

「ハマキョウレックス」を巡る訴訟では、トラック運転手をしている契約社員の男性が、月毎に正社員に支給される6種類の手当<(1)無事故手当(1万円)(2)通勤手当(距離に応じて支給)(3)給食手当(3500円)(4)作業手当(1万円)(5)住宅手当(2万円)(6)皆勤手当(1万円)>を支払うよう求めていました。

結果、「無事故手当」「通勤手当」「給食手当」「作業手当」について相当額の支払いを会社に命じた大阪高裁判決を支持。さらに、高裁が認めなかった「皆勤手当」についても支給しないのは不合理だと判断し、高裁判決の一部を破棄して審理を差し戻し。

「長沢運輸」事件については、抵触か否かの判断である1.職務の内容 2.転勤、昇進など配置の変更範囲 3.その他の事情 のうち3.のその他の事情が、(1)定年時に退職金を支給(2)年金受給前は調整給を支給(3)年収が約70%程度保障(4)再雇用契約に3人とも一旦は合意、これらで考慮されたといえます。至って” 妥当な判決 ”だと思います。「精勤手当」の支払いに対しては、手当の支給目的からしてやむを得ないのではと思います。

「ハマキョウレックス」事件については、1.職務の内容 2.転勤、昇進など配置の変更範囲 3.その他の事情の3点を考慮するに際し、「年収など待遇全体をみて判断する」のではなく、「賃金項目ごとに検討すべき」の決定が下りました。平成28年12月に公表されたガイドライン案とほぼ同じ考え方であり、いよいよ定年前に手当については、” バスに乗り遅れない ” 対応が迫られると認識しました。

平成30年4月1日より労働契約法第18条(有期労働者から無期労働者への転換ルール)が動き出しています。それにより、今回の争点である有期労働者に適用する労働契約法第20条(同一労働同一賃金)が、無期労働者には適用されなくなるという矛盾が生じることになります。この点について政府は、パートタイム労働法の第8条及び第9条を改正し、労働契約法第20条は廃止することにより対応しようとしています。

今後の法改正はあるにせよ、「同一労働同一賃金」に係る初めての最高裁判断として企業の賃金制度に影響を与える注目すべき判決です。

 

 

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