メンタルヘルス対策について
皆さんは、“自分はメンタルヘルス不調に陥ることはない”と思っていませんか。「ストレスには強い方だ」とか「メンタルヘルス不調は、気合が足りない人がなるものだ」とか、メンタルヘルスについての知識が間違っていると、自身の変調に気付けない(認知できない)可能性もあり、対応が遅れる危険性があります。
「健康経営」の中でも、メンタルヘルス対策についての取組みは重要なもので、従業員が心身ともに健康であることは、企業の健康につながるものです。
2014年の労働安全衛生法の改正により、労働者50人以上の事業所では「ストレスチェック」が義務化されました。そのため、近年ではメンタルヘルス対策に取組んでいる事業所の割合は、従業員規模が大きいほど高くなっています。
また、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業、または退職した労働者がいる事業所の割合は全事業所では1割ですが、500人以上の規模の事業所では8割を超えているという調査結果も出ています(2013年労働安全衛生調査 第7表参照)。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h25-46-50_01.pdf
最新版(2017年労働安全衛生調査 事業所調査)はこちらです。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h29-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
メンタルヘルス不調は、誰もがなる可能性があり、中小企業でも、今後メンタルヘルス対策に取組む必要性はますます高まりつつあります。
厚生労働省が5年おきに行っている「労働者健康状況調査」によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの原因」で男女ともに最も多いのは「職場の人間関係の問題」で、全体の40%を超えています。
最近の報道では、スポーツ界のパワハラ問題をよく見聞きしますが、職場においてもパワハラ問題は増加の一途をたどっており、厚生労働省が毎年公表している「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、相談コーナーへの相談内容でも「いじめ・嫌がらせ」の比率が年々高まっています。
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000213218.pdf
パワハラ等が原因で従業員が精神疾患を発症した場合、企業は「健康(安全)配慮義務」違反により、民事上の損害賠償責任に問われる可能性もあり、メンタルヘルス対策に取組む意義は事業所規模に関係なく必要であることがわかります。
冒頭でも触れたように、メンタルヘルスについて正しく知識を持つことは、自身の変調に気付きやすく、周りへの相談などのアクションも起こしやすくなり、早期発見につながります。これを「セルフケア」といいます。
ストレス予防の基本は「睡眠・休養」「食事」「運動」「リラクゼーション」そして「認知行動療法」です。適切な睡眠時間は人それぞれなので、長さにこだわって無理に寝ようとするのではなく、眠くなってから布団に入り、朝は日光を浴びて体内時計をリセットします。バランスの良い食事はもちろんですが、ビタミンB群を多く含む豚肉や乳製品等は、抗ストレスホルモンの合成に必要な食材です。そして定期的な運動習慣はストレス解消と熟眠を促す効果があります。ただし、激しい運動は脳が興奮状態となり、逆に眠れなくなります。
リラクゼーションとしては、お気に入りのアロマを焚いたり、静かに音楽を聴くのもいいですね。どこでもすぐにできる複式呼吸は、寝る前にもお勧めです。
最後の「認知行動療法」は、ものの考え方や受け止め方の歪みを元に戻していく療法で、物事を否定的に捉えたり、小さなミスを取り返しがつかないようなミスと捉えたりする認知のパターンを変え、悪循環を断ち切ろうとする療法です。
事業所が、従業員への「セルフケア」の教育研修や情報提供を行うことで、従業員一人一人が「セルフケア」を行え、メンタルヘルス不調の未然予防につながります。しかしながら、自身の変調に気付けずにやり過ごした場合の、従業員の“いつもと違う”様子は管理監督者による「ラインによるケア」での対応へとつながります。
メンタルヘルス不調は、誰もがなり得るものと考え、事業所でのメンタルヘルス対策の整備を進めていきましょう。