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同一労働同一賃金に係る検討の手順と留意点

   

2018年6月に成立した働き方改革関連法により、パートタイム労働法は有期雇用労働者も法の対象に含まれることになり、法律の名称も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パート・有期法と略します。)」になりました。

表題にありますように、検討ですが、

検討その1

「同一労働同一賃金」の意味を理解する。つまり、「同じ仕事(同一労働)」であれば「同額の賃金(同一賃金)」を支給することを企業に義務付ける規定ではないということです。「同一労働同一賃金ガイドライン」も、企業に職務給の導入を強制するような内容ではないということです。意味は、「非正規社員の均衡待遇・均等待遇の実現」です。今回の法改正では、有期雇用労働者の「均衡待遇」を規定する労働契約法第20条は削除され、現在のパート労働法の対象に有期雇用労働者も含まれることにより、パート・有期法第8条として継承されることになります。

労働契約法第20条関連の最高裁判例は、「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」が出ていますが、これに、近時では、賞与について労働契約法第20条違反を認めた「学校法人大阪医科薬科大学事件(大阪句高裁平31.2.15判決)」、退職金について労働契約法第20条違反を認めた「メトロコマース事件(東京高裁平31.2.20判決)」を認識する必要があります。

検討その2

自社における正社員と非正規社員の待遇差の検討作業にまず取りかかることがポイント。つまりは、「待遇差の説明」(1)だれが(どの部署が)、(2)どのような方法で(口頭か、書面か)、(3)どのような内容を説明するのか、を検討しておく必要があります。

検討その3

自社における社員の類型を分類し、待遇を一覧表で整理する。目的は、「通常の労働者」に応じた待遇差の整理をすることです。

分類作業は事業場単位ではなく、事業主単位で行う必要があります。

具体的には、労働契約に契約期間がなし→1)正社員(総合職・一般職)2)限定正社員3)無期転換社員

労働契約に契約期間があり→有期雇用労働者

比較時のポイントは、1)手当の趣旨を明確化する2)職務の内容、責任の度合い、配置の変更の範囲等が最も近いと判断する「通常の労働者」を対象とする

検討その4

職務内容の見直し。通常業務は同じでも、権限・責任関係を区別し、会議等への報告や、トラブル発生時や臨時・緊急時における対応義務等に違いを設ける方法等の検討です。

また、非正規社員の側では、「担当させない業務」も明確化する必要があります。職場において、非正規社員が便利に使えるからといって、重要な仕事も担当させている場合には、見直しが必要となります。

検討その5

無期転換制度の見直しを行う。正社員(無期雇用フルタイム労働者)同士の待遇差は、今回の法改正では規制対象にはなっていません。労働契約法第18条により無期転換する社員(無期転換社員)がフルタイム勤務の場合も、正社員との間の待遇差は法規制の対象外になります。ただ、無期転換社員と有期雇用労働者との待遇差には注意が必要となります。無期転換後の労働条件(待遇)をアップする場合には、これに応じた職務内容や配転範囲の変更等を行い、無期転換していない有期雇用労働者との間の待遇差の理由を説明できるようにしておく必要があります。

検討その6

有期雇用労働者のまま更新を続けるリスク。労働契約法第19条との関連で、有期雇用労働者の契約更新には上限を設けて、長期更新を制限することも選択肢です。また、優秀な有期雇用労働者で、更新上限後も継続雇用したいという場合には、登用制度で正社員や限定社員等になってもらうのが適切です。

以上ですが、実務的にはまだまだ課題がありますので、引き続き学習を続けていきます。

 

 

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