非喫煙者や飲酒を習慣としていないことを採用の条件として盛り込むことは可能か
先日新聞である企業が喫煙者の採用を見送るという記事を見ました。
原則として使用者は、特別な制限がない限り、自由に採用できると言えます。制限としては、性別や障害者を理由にした採用差別の禁止があります。
厚労省のパンフレットをみても、『応募者の適正・能力とは関係ない事項で採否を決定しない。』とされ、本人に責任がない事項(本籍、続柄、生活環境、宗教、信条、労組の加入など)での採否の影響を認めてはいません。
では、喫煙や飲酒を採用の可否に盛り込むことはどうでしょう。
【喫煙】
喫煙に関しては、喫煙の自由は最高裁では憲法13条の保障する基本的人権に含まれると判示しています。一方、煙草はある程度高い普及率の嗜好品であるともしています。
煙草による健康への影響(他者への影響を含め)、健康経営への取り組みとして、非喫煙者を採用条件に設けることは、合理的な制限であり、公序良俗違反や不法行為には該当しないと考えられます。
【飲酒】
飲酒についても、喫煙と同様に個人の自由に委ねられています。
しかし、節度を持って飲酒すれば、他者に迷惑がかかるものではありません。
喫煙と比較しても、一切の飲酒を許容しないとすれば私的な部分に踏み込みすぎ、過度な制限にあたると考える方もいると思います。
使用者としては、飲酒の習慣がない者を採用条件に盛り込む場合には、健康経営の取り組みという目的だけでなく、飲酒の習慣が業務・業績にどういう影響を与えるか精査して上で、どの程度の飲酒が『習慣』にあたるか明確な基準を示した上で、飲酒の習慣がない者を採用基準に盛り込む事が必要となっていくと思われます。