管理監督者の該当性
弊社では週の初めにスタッフ全員で労働判例の勉強会を実施しています。一つの労働判例を題材にして各々がその判例から何を得たか、お客様にお伝えできる情報はないかといった学びの場となっています。
ここ2週ほどは管理監督者性について問う判例が続きました。
日産自動車事件(横浜地判平成31年3月26日)
ジーイーエス事件(大阪地判平成31年2月28日)
どちらも地裁ではありますが、管理監督者には該当しないという判決が下されました。
管理監督者性に該当するかどうかの判断としては、3つのポイントが挙げられます。
①職務内容、権限、責任
当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付されているか?
経営者と一体的な立場で仕事をするためには、経営者から管理監督、指揮命令にかかる一定の権限を委ねられている必要があります。
②勤務態様、労働時間管理の現況
自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか?
管理監督者の出退勤時間は厳密に決めることはできません。勤務時間の制限がない以上、出退勤時間も自らの裁量に任されていることが必要です。
③待遇
給与等に照らし、管理監督者としての地位や職責にふさわしい待遇がなされているか?
管理監督者はその職務の重要性から、地位、給料その他の待遇について一般社員と比較して相応の待遇がなされていることは当然であるべきと判断します。
上記2点の判例では、2、3の要素においては管理監督者の該当性は認められたものの、1の要素においては否定されてしまいました。
このように、労働基準法が定める管理監督者の要件を満たすことは厳しいものとなっています。部長、店長、工場長など、単に会社組織における管理職であるだけでは、要件を身たさないことが多々あります。
管理職だから残業手当は必要ない、管理職であれば何時間働いても構わないということはありません。管理職であっても権限が与えられず、相応の待遇もなく肩書きだけがついているような場合であれば、当然に残業代や休日出勤手当の支払いは必要となりますし、管理監督者である管理職であっても健康を害するような長時間労働をさせてはいけません。
管理監督者については、肩書きや職位ではなく、立場や権限を踏まえて実態から判断をすることが必要と言えます。