厚生年金保険料の等級引き上げ
社会保険に加入している方の毎月の給与から引かれている厚生年金保険料。
厚生年金保険料は、標準報酬月額に厚生年金保険料率を乗じて計算しています。標準報酬月額とは保険料の計算に用いる給与などの月額で、一定の金額ごとに区分されてその等級が決められています。
等級の決定方法は、資格取得時決定、定時決定、随時改定等と複数ありますが、基本給、通勤手当、各種手当から算出し、区分された等級にあてはめてなされます。
そしてこの標準報酬月額は、厚生年金保険制度では、1等級から31等級までで区分されており、最高等級は31等級・62万円となっていました。
この最高等級である31等級・62万円の設定が、32等級・65万円に引き上げられる検討がなされています。
現行の最高等級である31等級では、報酬の月額が60万5000円以上の方がすべて標準報酬月額62万円となっています。しかし、等級が引き上げられた際には上限額も引き上げられる為、 63万5000円未満の方は31等級62万円のままで、63万5000円以上の方は新しい最高等級である32等級65万円となります。
厚生年金保険制度では、3月31日時点で、全厚生年金被保険者の標準報酬月額を平均した額の2倍の額が最高等級の標準報酬月額を超え、これが継続する場合、その年の9月から新たな等級を加えることができることとなっているため、これによって新しい等級である32等級の検討がなされるのです。
これまでは、実際の毎月の報酬が80万円の人も100万円の人も、標準報酬月額は62万円と設定され、各月の厚生年金保険料の計算においては、62万円に厚生年金保険料率を掛けることになっていました。しかし、新たな等級である32等級が設定された場合、65万円に保険料率18.3%を掛けることになるため、負担する保険料が増えます。
報酬の高い方は保険料が上がりますが、その一方で将来受ける老齢厚生年金(報酬比例部分)については、標準報酬月額65万円分を元に計算されることになります。
年金の受給額は、厚生年金加入期間中の標準報酬月額と、賞与が支給された際にはその標準賞与額も加算されたことによって決まる報酬比例制になっていますが、これまでの62万円分で計算される場合よりも多く計算されることになるでしょう。
厚生労働省は保険料収入を増やすことで年金財政を安定化させる狙いをもっているものと考えますが、短時間労働者への厚生年金の適用拡大も踏まえると、負担増となる方や、保険料を半額負担する企業側も、その対応を検討しておく必要が求められます。