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時間単位年休

      2020/12/05

昨年、2019年4月1日に働き方改革を推進すべく労働基準法が改正され、会社には、原則として、年5日間の有給休暇を従業員に取得させることが義務付けられました。

 

改正時に入社し、その後10日の有給休暇を付与された方はそろそろ1年が経つ頃かと思います。予定通りに取得できた方、業務の都合など様々な事情で思ったようには取得ができなかった方もいらっしゃるでしょうか。

 

有給休暇は1日単位でしか取得できないものではなく、手続きを踏まえたうえで半日単位、時間単位でも取得することが可能です。従業員からすると「用事を済ませる為に2時間だけ休めればそこから出勤できるんだけど…」という方も中にはいらっしゃるかと思います。会社側にとっても、「午後は会議があるから出社してほしい」というような場合、半日単位、時間単位での取得は双方にとって非常に有益となります。

 

「半日単位」と「時間単位」とは似て非なるものですので、それぞれ区別して理解することが必要です。会社が時間単位年休を導入するためには、2つの要件を満たす必要があります。

 

・ 労使協定を締結すること

・就業規則に記載すること

 

法律によって、時間単位年休を取得することができる上限は1年に5日間であるため、労使協定においては、5日間の範囲内で上限日数を定めます。1日の所定労働時間が8時間の会社であれば、従業員が時間単位年休を取得できる上限は「40時間(8時間×5日)」までとなります。初めて時間単位年休を導入する会社においては、試験的に上限日数を1日や2日からスタートし、取得状況や従業員の意見を聞いてその後は柔軟に対応していくこともよいでしょう。

 

また、「1日分の有給休暇が、何時間分の時間単位年休に相当するか」についても定める必要がありますが、通常は、「所定労働時間」を基準に定めます。所定労働時間が8時間であれば、1日あたり8時間分の時間単位年休を取得することができる旨を定めます。所定労働時間が7時間30分や7時間45分というように1時間未満の時間がある場合は、1時間未満の端数を「1時間に切り上げる」ことが求められています。したがって、1日の所定労働時間が7時間30分や7時間45分であれば、端数を切り上げて「8時間」とする必要があります。なお、日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日の平均所定労働時間数を用いることとなります。

 

時間単位年休の日数は、前年度の繰り越し分の日数がある場合には、その日数を含めて5日の範囲内とする必要があります。例えば、1年目に40時間(1日8時間×5日)の時間単位年休のうち、30時間を使用し、10時間を残していた場合には、10時間が翌年度に繰り越されます。そして、翌年度においては、この繰り越された10時間を含めて、5日の範囲内で時間単位年休を取得することができます。

 

時間単位年休と、半日単位の有給休暇を併用することは可能であり、半日単位の有給休暇を取得したからといって、時間単位年休で取得できる日数に影響を与えるものではありません。また時間単位年休については、義務となった5日間の取得から控除することは認められませんのでご留意ください。

 

時間単位年休は、会社側の労務管理の負担は増しますが、従業員の多様なニーズに応えることのできる制度であると言えます。2021年1月1日からは育児・介護休業法の改正により、育児や介護を⾏う労働者が、⼦の看護休暇や介護休暇についても時間単位で取得ができるようになります。まだ導入していないという会社は、半日単位の有給休暇や計画付与などの制度と併せて、ご検討されてはいかがでしょうか。

 

 

参考

年次有給休暇の時間単位付与

https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1l-04.pdf

リーフレット「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf

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