有期雇用労働者の雇止めについて
2020/10/05
契約期間の定めのある雇用契約を結んでいる労働者(以下、「有期雇用労働者」という)に関して、企業側がその契約の更新を自由に拒否できるものではありません。
企業側が有期雇用労働者の雇用契約を終了する方法は、「契約期間中の解雇」と「雇止め」の2つの方法があります。
雇止めとは、有期雇用労働者をその雇用契約期間の終了をもって、更新せずに契約を終了することです。
上記2つの方法には、契約が終了するタイミングに違いがあります。
契約期間中の解雇は、会社側は「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約期間が終了するまでの間において解雇することができないとされており、この「やむを得ない事由」は、雇止めや解雇に求められるハードルより高いものと考えられています。
一方で雇止めであっても、一定の雇用期間が継続し、有期労働者であっても雇用契約の継続への期待を保護すべき場合には、一定の制限をかけ有期労働者を保護される場合があります。以下の3つの裁判では、いずれも有期雇用労働者の雇用契約の継続への期待を保護するため、企業側の雇止めが制限されました。
・東芝柳町工場事件(最高裁、昭49.7.22)
契約を最高で23回更新し、実質無期タイプであり、雇止めは解雇の意思表示と実質的には変わらない。
・日立メディコ事件(最高裁、昭61.12.4)
業務内容が、臨時的作業のために雇用されたわけでなく、雇用関係の継続が期待された、期待保護タイプである。
・龍神タクシー事件(大阪高判、平3.1.16)
企業側の言動を理由に有期雇用労働者を保護する判断をした裁判。
無効とならない為に、企業側が雇止めを検討するときには、以下の点に注意する必要があります。
1.採用選考時に明確な説明を行う
採用面接時に、有期契約等や更新の有無について、双方に誤解のないような説明を行う。
2.適切な内容の雇用契約書を締結する
労働条件通知書を交付する時や雇用契約書を締結する時に、従前の同じものをコピーして使用するのでなく、更新が無い場合には「更新しない」とはっきりと伝え、更新する場合であっても更新基準を明確にし「更新する場合があり得る」程度に留めておく。同時に、更新条件を列記しておく必要があります。
3.他の有期雇用労働者の取扱いに配慮する
他の同様の有期雇用労働者が、更新することが常態化している場合など、自分も同然更新してもらえると期待する場合があります。他の労働者と異なる場合には、前もって説明しておくことが重要となります。
4.更新の期待を抱かせる言動は行わない
会社の代表や役員等から、更新を期待させる言動があった場合、更新を反復継続していなくとも、雇止めが無効と判断される可能性があります。誤解や期待を抱かせないためにも、不注意な言動は慎むよう注意が必要です。
5.更新時に適切な手続きを行う
契約更新時の手続きが、煩雑になっておりただサインをするだけになっていると、実質的には無期雇用に等しいものと評価される危険があります。更新時には、面談等をしっかりと行い、適切な手続きを行う必要があります。
6.更新時の妥協をしない
更新時に勤務態度や能力に不満があっても、妥協して更新してしまうと、更新した事実は変わらず、その後の更新の期待は高くなります。更新せざるを得ない場合であっても、更新の面談時に改善する事項がある場合には、指摘するなど改善を促す必要があります。将来的に、改善が見られないことを理由に雇止めする際に、書面にて証拠化しておくこともお勧めします。