確定拠出年金制度
人生100年時代と言われていることもあり、老後所得の確保の為、定年後も可能な限り就労を続けたいという方も多いのではないでしょうか。前回担当したコラムでは、70歳までの就業機会の確保に向けて令和3年4月1日から施行予定とされている、高年齢者雇用安定法の改正について取り上げました。就労以外での老後所得でまず一番に思い浮かぶのは老齢基礎年金、老齢厚生年金等のいわゆる「公的年金」ではないでしょうか。年齢、性別にもよりますが、公的年金の支給開始年齢は原則65歳です。60歳で定年退職する場合はその後5年間、公的年金を受け取ることができません。公的年金だけでは、生活資金として不足する、と不安をお持ちの方も多いように思います。
その不足する部分を個人が自助努力で補う目的で日本にも導入された、確定拠出年金制度。こちらは公的年金とは反対に、任意で加入できる制度であることから「私的年金」と呼ばれています。この確定拠出年金などの「私的年金」を活用することによって、先ほど不安視していた公的年金受給までの空白の期間や生活資金の不足分を補うことが可能となります。
確定拠出年金法の施行から早くも20年が経過しましたが、制度が開始した頃に比べると加入要件も緩和されてきています。前回の改正で公務員、専業主婦(国民年金の第3号被保険者)、確定給付型の企業年金を導入している企業の会社員も対象に加わったことにより、10年前は50万人に届くかどうかの個人型DCの加入数が、2020年3月末時点では160万人と約3倍の伸び率となっています。
そして今後も改正が続きます。
・iDeCo加入要件の緩和 (2022年10月施行)
企業型DC(企業型確定拠出年金)の掛金額を管理している運営管理機関とiDeCoの掛金額を管理している国民年金基金連合会が連携することにより、それまで加入制限のあった方のiDeCoへの加入が月2万円の範囲内で可能となります。ただし、月5.5万円の拠出限度額を超えることはできず、企業型DCが優先される等の制限は残りますのでご留意ください。
・iDeCoへの加入可能年齢の引上げ(2022年5月施行)
現在は60歳までが拠出可能であるところを最大65歳まで掛け金を拠出し続けることが可能となります。
・受給開始年齢の引上げ (2022年4月施行)
拠出可能年齢が60歳までであることから受給開始も60歳からとなっていますが、今後、公的年金の繰下げが75歳まで可能になることを踏まえて、DCの受給開始年齢も同様に75歳に引き上げられます。
・外国人労働者の帰国時に脱退一時金の受取りを認める(2021年4月施行)
外国籍の方がDC加入していた場合、60歳まで受取りを留保しなければなりませんでしたが、帰国する際に国民年金の加入者とならない場合については、公的年金と同様に脱退一時金を受給できるようになります。
個人型DCの改正に併せて、企業型DCについても加入可能年齢の引上げやポータビリティの拡充等、より使い勝手の良いものへ改正が進められていきます。制度を導入している企業には、企業側・労働者側の双方に福利厚生としての活用、節税対策等のメリットもあります。この機会に確定拠出年金について考えてみる時間をお持ちになられてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省参照:確定拠出年金制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/index.html#h2_2