高年齢者の健康就労に向けて
2021/04/26
先週のコラムで取り上げました「70歳までの就労確保措置」にもありますように、人手不足と言われる中、高年齢者の労働力は年々重要視されてきています。高年齢者が長く働けることは、企業側にとっては労働力の確保、労働者側にとっては収入を得るためという経済的動機や社会参加に対する意欲という点でも、双方にメリットがあるものと思います。
厚生労働省はこういった現状や社会情勢をふまえて高年齢者が働きやすい職場環境の実現に向けて「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン 」を公表しています。
しかしながら、高年齢労働者は身体機能の低下等による労働災害が増加傾向にあるのが実情です。労働災害による休業4日以上の死傷者数のうち、 60歳以上の労働者の占める割合は平成30年で26.1%と、男女ともに若年層に比べ相対的に高くなっています。 (25~29歳と比べ65~69歳では男性2.0倍、女性4.9倍)このことからも企業に対してはリスクアセスメントの実施、対応が求められます。
【事業者に求められる取組】
1 安全衛生管理体制の確立等
・経営トップ自らが安全衛生方針を表明し、担当する組織や担当者を指定
・高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害についてリスクアセスメントを実施
2 職場環境の改善
・照度の確保、段差の解消、補助機器の導入等、身体機能の低下を補う設備・装置の導入
・勤務形態等の工夫、ゆとりのある作業スピード等、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理
3 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
・健康診断や体力チェックにより、事業者、高年齢労働者双方が当該高年齢労働者の健康や体力の状況を客観的に把握
4 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
・健康診断や体力チェックにより把握した個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務をマッチング
・集団及び個々の高年齢労働者を対象に身体機能の維持向上に取り組む
5 安全衛生教育
・十分な時間をかけ、写真や図、映像等、文字以外の情報を活用した教育を実施
・再雇用や再就職等で経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練
【労働者に求められる取り組み】
・自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努める
・日頃から運動を取り入れ、食習慣の改善等により体力の維持と生活習慣の改善に取り組む
上記3,4については特に加齢に伴う身体的な機能の低下や複数の慢性疾患に加え、認知機能等、多様な課題や不安を抱えている高年齢労働者も多く、効果的な取組みが求められています。
また高年齢者だけでなく、40代から50代の現役世代の方々に向けた介護予防・フレイル予防の啓発や、疾病の重症化予防も有効です。人は突然元気な状態から要介護の状態になるのではなく、フレイルと呼ばれる中間の期間を経てから要介護へと至るため、現役世代のうちから生活習慣病予防や、早期からのフレイル予防に取り組むことが重要です。
厚生労働省参照:
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000608124.pdf
東京都福祉保健局参照:
介護予防・フレイル予防