テレワークにおける新ガイドライン(令和3年3月25日改定)
令和3年3月25日、厚生労働省はテレワークについて新ガイドラインである「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を発表しました。テレワークを推進するために旧ガイドライン(平成30年2月)からタイトル名まで変更した抜本的な見直しです。目次としては 『1.主旨 2.テレワークの形態 3.テレワークの導入に際しての留意点 4.労務管理上の留意点 5.テレワークのルールの策定と周知 6.様々な労働時間制度の活用 7.テレワークにおける労働時間管理の工夫 8.テレワークにおける安全衛生の確保 9.テレワークにおける労働災害の補償 10.テレワークの際のハラスメントへの対応 11.テレワークの際のセキュリティへの対応』の項目があり、さらに詳細について細分し、チェックリストが設けられています。
大きな改定内容は以下のとおりですが重要ポイントを絞ってチェックしていきます。
- 労務管理全般に関する記載の追加(人事評価、費用負担、人材育成等) 4-(1),(2),(3),(4)
- テレワーク対象者の選定についての留意点 3-(3)
- 導入に当たっての望ましい取組として書類のペーパーレス化の実施等を記載 3-(4)
- テレワークにおける労働時間の把握や、中抜け・移動時間に関する取扱い 7-(2),(4)
- ワークライフバランスを実現するための長時間労働対策 7-(4)
- 自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策や作業環境整備にあたってのチェックリストを作成 8-(2),別紙
◇テレワークの対象者について
・テレワークの対象を選定する際は、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象者から除外することがないように留意することも求められています。均衡待遇規程違反(パート・有期法8条)と指摘を受けないように職務の内容から対象を選定し、適用しない場合には不合理な差がないことを説明できるようにしておくべきです。
◇人事評価について
テレワークは非対面の働き方であるため、個々の労働者の業務遂行状況や成果を生み出す過程で発揮される能力を把握しづらいとの指摘があります。その過程を評価する必要があるのであれば報告方法や作業状況の管理を工夫する必要がありそうですし、成果のみを評価すれば良いのであれば具体的に部下に求める業務内容や水準を示す必要がありそうです。評価期間中には達成状況について労使共通の認識を持つ機会を複数回設けることが望ましいと言えます。
◇費用負担について
費用負担については労使どちらが負担すべきがの明言はされていませんが、労働者に過度の負担が生じることは望ましくないとし、費用の請求方法等は労使で十分に話し合い就業規則等に規定しておくことを推奨しています。特に労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には当該事項について就業規則に規定しなければなりません。(労基法89条第5号)
◇労働時間の把握について
・中抜け時間
テレワークに際しては、一定程度労働者が業務から離れる時間が生じることが考えられます。(在宅の場合、例えば急な私的な来客対応や電話対応等)この中抜け時間についての把握についてはしてもしなくてもいずれでも良いとされています。中抜け時間を把握する際には終業時に報告させて、終業時刻の繰り下げ等の対応が考えられます。
・移動時間
就業場所間の移動については、労働者による自由利用が保障されている時間については、休憩時間として取り扱うことが考えられます。一方で使用者が具体的な業務のために急遽オフィスへの出勤を求めた場合等自由利用が保障されていない場合の移動時間は労働時間に該当します。
◇長時間労働対策
テレワークによる業務の効率化が時間外労働の削減につながるメリットが期待されますが、離れた距離によって勤務することで使用者の管理の程度が弱くなるおそれに留意が必要です。長時間労働等を防ぐ手法として以下の項目を挙げています。
(ア)メール送付の抑制等 (イ)システムへのアクセス制限(ウ)時間外・休日・所定外深夜労働についての手続き(エ)注意喚起(オ)その他
今回の新ガイドラインは、多少のボリュームがありますので、概要をお伝えいたしました。テレワークの実施を検討されているのであればご一読されることをおすすめいたします。またその他の詳細や規定化のご要望があればご相談くださいませ。
厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html