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■年次有給休暇算定の基礎となる全労働日

      2016/02/21

年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱いについて
「労働者の責に帰すべき事由によらない不就労日は、出勤率の算定に当たって、出勤日数に算入すべきものとして原則全労働日に含まれる」(平成25.7.10基発0710第3号)といった通達が出ました。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T130718K0010.pdf

そこで、年次有給休暇の付与要件となる出勤率の計算について振り返ってみようと考える次第です。お付き合いくださいませ。
基本は・・・

対象労働者の出勤日数(出勤したと見なされる日数)
─────────────────────────≧8割
その労働者の所定労働日数(全労働日数)

です。
但し、この計算には、次のことに注意しなければなりません。

1.所定労働日数(分母)
対象労働者の所定休日を除いた日数であり、休日労働させた日は含まれません。
また、
(1)使用者の責に帰すべき事由による休業の日
(2)正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
については所定労働日には含めずに出勤率の計算を行う必要があります。

2.出勤日数(分子)と所定労働日数(分母)の算入について
遅刻ないし早退した日でも、出勤している以上、年休算定上「出勤日」とみなされます。
年次有給休暇としての休業日数は、本条一項・二項の規定の適用については出勤したものとみなし(昭和22.9.13次官通達17号)、全労働日の日数は、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、所定の休日に労働させた場合にも、その日は全労働日に含まれない。使用者の責めに帰すべき事由による休業の日、正当な争議行為により労務提供のなされなかった日は全労働日に含まれない(昭和33.2.13労働基準局長通達90号)(昭和63.3.14労働基準局長通達150号)ものとして取り扱わなければなりません。
「生理休暇」は、行政解釈で「全労働日」に算入される(労働日であり、出勤していないものとして取り扱う)と解されている(昭和23.7.31 基収2675号)ものが多くみられ、主流であると考えますが、反対とする意見もあるようです。よって、会社の裁量で労働者が有利になるように取り扱うことは可能ですが、その場合には、就業規則へ規定しなければならないと考えます。
「看護休暇」については、法令に特別取扱いが規定されていない為、欠勤とみなしても差し支えないと考えます。
参考までに・・・
□分子・分母ともに算入
(1)業務上災害・疾病による療養のため休業した期間
(2)産前産後休業期間
(3)育児・介護休業期間
(4)年次有給休暇
□分子・分母ともに除外
(1)使用者の責に帰す休業期間
(2)ストライキ等
(3)休日労働日
(4)休職期間中
(5)不可抗力による休業日
□分子・分母ともに除外可(会社の裁量・労使の合意によって算入可)
(1)通勤災害による休業日
(2)生理休暇日
(3)会社休暇日(休職、特別休暇等)

休職期間については、分子・分母から除外と一般的には解釈されおります。
休職発令された労働者が年次有給休暇を請求したときは、「労働の義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がない」為、これらの休職者は、年次有給休暇の行使ができません(昭和31.2.13 基収489号)。
このことから、病気欠勤中は欠勤と扱われ、休職処分となった段階で、出勤日(分子)/全労働日(分母)の双方から除外されるとの考えに至ります。
これらの基準はあくまでも労働基準法第39条の適用について定めたものであり、各企業における「精皆勤手当の支給」や「賞与の査定」とは関連していませんが、労基法の趣旨からいって、年休取得の抑制につながるような取扱いは不適当とされている(昭和53.6.22 基発355号)為、注意が必要です。
また、慶弔休暇を取った日等については、就業規則等で、
(1)慶弔休暇等を就業義務を免除する日という趣旨で定める場合
(2)単に病気欠勤と同様に労働義務不履行の責任を問わない日という趣旨で定める場合
があり、(1)の場合に限って、「全労働日」に算入されないことと解されていることも細かい事ではありますが注意が必要です。

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