時間外労働の上限規制
先日の新聞で“過労死ラインの見直し”の記事を拝見しました。国はこれまで過労死を認定する基準について、残業時間が、① 病気の発症直前1か月に100時間、② 発症前の2か月から6ヶ月は1ヶ月平均で80時間をいずれも超えた場合などとしており、これが過労死ラインと呼ばれています。
ご承知の通り、平成31年4月1日からは時間外労働等の上限規制が設けられました。中小企業に対しても、その後1年間の猶予期間を経て適用がされました。また、建設業や医師等の一部の業種は、令和6年3月31日までのさらなる猶予期間が設けられています。
主な内容は、①1ヶ月の時間外労働および休日労働させることができる時間を100時間未満とすること、②2ヶ月~6ヶ月の時間外労働および休日労働させた時間の平均が1ヶ月当たり80時間を超えないこと等の内容です。
これらを超える36協定の締結は無効となり、協定で定めた範囲を超えて労働させると罰則もあります。罰則内容は“6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金”となっております。
◆厚生労働省 時間外労働の上限規制わかりやすい解説
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463185.pdf
平成31年の法改正を遵守していれば、まずは上記の過労死ラインに該当してくることはなくなります。
しかし今回の見直しにより、さらに認定基準の引き下げが考えられ、会社としては一層意識しながらより労働時間の把握をしていくことが求められます。
また、特別条項を締結して限度時間を超えて労働させる場合は、36協定に労働者の健康及び福祉を確保するための措置として以下の対策が求められています。
1.医師による面接指導
2.深夜業(22時~5時の回数制限)
3.終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
4.代償休日・特別な休暇の付与
5.健康診断
6.連続休暇の取得
7.心とからだの相談窓口の設置
8.配置転換
9.産業医等による助言・指導や保健指導
記載のみでなく、実際に行うことで過重労働の防止、しいては過労死の防止のためにも必要な対策となっております。
同時に、時間外労働が1ヶ月間に60時間を超えた場合には、その超えた時間について5割以上の割増賃金を支払わなければなりません。中小企業については令和5年3月31日まで適用が猶予されていますが、これまで長時間労働を黙認していた中小企業では、適用より、人件費の負担が大きくなってしまう可能性があります。
中小企業への適用まで残り2年弱ではありますが、早めに60時間超を意識して、長時間労働者に対しての業務の見直しや効率化、何となく残業をしていることが習慣になっている場合には注意し、改善に向けて対策を急ぐ時期に来ているのではないでしょうか。