医療労務コンサルタント研修を受けて
先日、社会保険労務士会で2日間にわたり医療労務コンサルタントの研修を受けてきました。
私自身、医療は今まで全く勉強したことがない分野ですが、身近に医療関係で働いている人から就労環境に関する相談を受けることもあり、非常に関心がありました。
日本医師会や日本看護協会から、医療業界を取り巻く労務管理の現状について講義をうけましたが、よく耳にする医師不足の問題の背景には、想像以上に厳しい職場環境と長時間労働の厳しい現実があることを学びました。
医師の休日日数の調査において、休日は月に4日以下と回答したのが全体の46%で、そのうち20代では76%が4日以下、年代が上がるにつれ休日4日以下は減る傾向がありますが、特に若い医師は宿日直が多いことが休日日数の少ない原因の一つとして挙げられています。
宿日直勤務は労働基準法41条及び労働基準法施行規則23条に規定があり、宿日直勤務者については、労働基準監督署長の許可を得たうえで、労働基準法上の労働時間、休憩、休日に関する規定は適用が除外されます。
医療法16条には、「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と規定されていることもあり、特に医師・看護師については、①通常の勤務時間の拘束から完全に解放されたものであること、②軽度又は短時間の業務に限ること、③夜間に充分睡眠がとりうること、などというように、別枠で詳細な基準が設けられています。
具体的には、病室への定時巡回、少数の要注意患者の定時検脈、検温等といった軽度の又は短時間の業務内容に限り許可が出ることになっています。
したがって、所定時間外や休日の勤務であっても、労働基準監督署の許可を受けず、本来の業務の延長と考えられるような業務を処理することは、宿日直勤務と呼んでいても労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)に定める「監視・断続的労働」の宿日直勤務として取り扱うことはできません。
しかし、このような身体に高い負荷がかかる宿直業務をおこなっていても、医師や病院は労働時間と認識せず、職場を第一とした考え(職業倫理)から、長時間労働が常態化している現場も多いと聞きました。
昨今、新型コロナウイルスの対応等で、医療がひっ迫している中、医療関係者の多くの苦労を想像すると、医療を守る高い使命感や責任感には本当に頭が下がります。労務管理の専門家として、このような勤務環境の改善にむけてどのように相談支援をさせていただいたらよいか、深く考えさせられました。
研修の最後には、事例からグループで課題と改善について話し合い、発表を行いました。課題へのアプローチ方法やメンバー間で知識の共有ができたことは非常に勉強になりました。
最後に、研修を通して気づかされたことは、医療関係の労務に限らず、それぞれの会社の職場環境の改善について、会社の方針や現場の意見をよく聞いて、その中から課題を見つけ出し、改善に向けて出来ることから一緒に考える事が非常に大切であって、お客様に寄り添った相談支援を心掛けていきたいと考えています。